ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 非道で純粋な恋 ( No.13 )
日時: 2010/11/02 20:22
名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
参照: http://PCが変わったので名前も変えてみました← 十六夜です

02

11月13日。その日は部活で帰りが少し遅くて、だけど雨続きだったのに今日だけは綺麗な夜だった。
丁度満月の日で月明かりで道が良く見えるだなんて言う珍しいこともあり心はどこか嬉しかった。
そんな事があるなんて知らないから、純粋に喜べていたのだろう。きっと、そうだ。


今日はお母さんが遅いし、私が夕飯を作る日だから急いで帰ろう。そう思って陶華と急いで分かれて帰る。
帰って来て微笑む妹—由理の笑顔を見たくて走っていた。

「……あ」

ふと自動販売機が目に入り期間限定の由理の好きなミルクカフェオレ(ミルクの強いカフェオレ)があった。
寒くなってきたし、由理にお土産代わりに買って行こうと思って急いで小銭を入れて買う。
出てきたミルクカフェオレは熱いくらいに温かく、また心を弾ませた。



だけど、この時“もっと”早く帰っていればこんな事にはなっていなかったのかもしれない……





「ただいま〜……」



目に入った光景は私にとって、地獄そのものだった。




由理が床に血を流して横たわっていて




その由理の前には、山瀬先輩が立っていた。


由理は玄関に居た私からでも分かる。死んでいた。





「…………え? ———ゆ、り?」

ゴトッ。手に持っていたミルクカフェオレが手から滑り落ち、床にぶつかった衝撃で中身が零れた。
けれどその時の私はそんな事を気にしていられるほど冷静では無かった。それくらい、驚いていたのだ。
だって、昨日まではあんなに元気そうに普通に、本当に何も無くて……


今の由理の面影何か、ちっとも無い。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ズタズタに切り裂かれていて血まみれの由理の面影何か、ちっとも無かった……!!
そう、何も無いただただ平凡な日常だった。なのに、なのに、それなのに……どうして?
右手に恐らくとは言えない間違いなく由理を刺していた包丁を持ちながら山瀬先輩はこちらを向いた。
目が何処か泣きそうで、それでいて無気力そうで何処か刑務所に入れられた死刑囚の様な印象を受ける。
……いや、今だから言える事であって多分この時は何も考えていなかったと思う。

「真理……お前と俺を、邪魔してた奴を  殺  し  て  やってたんだ」


……私と先輩を邪魔してた奴? 誰ですか?


ダレなんですか、それ。一体誰なんですか。由理じゃないですよね? おかしいですよね?
先輩は何で、どうして……どうして由理を、包丁で刺してるんですか?
狂った様に心の声が自分の中で叫び散っていた。叫び散ると言うよりは泣き叫んでいたのかもしれない。

「これで、誰の、邪魔も、されない……」

途切れ途切れに言う先輩は何処か苦しそうで肩で息をしていた。しかも顔は青白く頬も少しこけていた。
だけど、そんな先輩など気にする訳もなく私は涙をこぼしながら叫んでいた。





「お前なんか先輩でも人間でもない!! 
            この人殺しッッッ!!!」



それから先輩はあっけなく逮捕されて、由理は身内だけで葬式が行われて埋葬された。
そして、それから





        私は人を信用しなくなっていた。