ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 非道で純粋な恋 参照100突破! ( No.39 )
- 日時: 2010/11/03 20:55
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://PCが変わったので名前も変えてみました← 十六夜です
03
それはまたも突然に蘇る。あの映像。二年前の月の綺麗なあの晩に起こったあの事件。
どうしてか、一体何なのか。今日は別の日の映像が蘇ってきた。いや、忘れていたわけじゃないけど。
いや、映像の経緯は至って普通の授業の日に起こった。簡単に言えばカラスアゲハを見てから少しして。
「此処はテストに出るから気をつけろよ〜もうすぐテストだからな……」
国語の授業。いつも予習しているからやけに理解しやすいので何故か眠くなってくる。
前の席の陶華は真面目に勉強していて……いる訳は無く頬杖をしながら先生の話を適当に聞いていた。
そしてその時——————映像が蘇ったのだ。
(あれ…………?)
そしてその映像はいつもの映像と違和感を感じるものだった。まず、見えている映像が違う。
由理が血まみれで床に横たわっているのは変わらないが、先輩が驚いた風に目を見開いている。
けれど映像の私はまだ涙をこぼしていない。その映像を実際に体験している私には何故か分かった。
恐らくこの映像は誰の邪魔もされない、と先輩が言った後だろう。そう、新しい記憶が蘇ったんだ。
「俺は邪魔な奴を、消したんだ……ははは、は、は……っ」
一瞬本当に先輩を殺してしまおうかと思っていた瞬間、突然先輩は驚いた風に目を見開く。
そして後ろを振り向いたかと思うと突然に
「っ……お、おっ俺は、俺は…………うぁ……うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
叫びだした。由理を見て泣き出しそうな程に叫び狂った。私は殺す殺さない以前に何故か背筋が凍る。
……純粋に“恐ろしかった”。叫び狂う先輩が純粋に“恐ろしかった”のだ。
散々叫んだかと思うと先輩は立ち上がり包丁を持ってこちらを向く。私は唾を飲んだ。
「お、前を……殺し、て、……死ん、で、やる……」
先輩はそう言って何故かふらつきながらこちらへ一歩一歩近づいてくる。
今度あふれ出す感情は……こんな時にもかかわらず憎悪だった。恐怖よりも怒りがあふれ出した。
「ふざけるな……」
新しい記憶? いや、違う。私は瞬時に悟る。
フラッシュバックのハザードレベルが上がったのか何なのか曇っていた何かに光が差した。
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざかるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!
人を殺しておいて邪魔者だと? 人をろくに愛していない一方的な愛情表現を愛だと?
人のそれこそ愛している家族を殺して、被害者ぶりやがって……あの、野郎ォ…………!!!
自分の思ったのかさえ分からない心情がフラッシュバックする。強い衝撃に襲われる気がした。
そして映像の自分が涙を流す。
「お前なんか人間でも先輩でもない!! 人を殺して間の何だの語っている偽善者!! お前なんか死んでしまえ! この世から消えてしまえ!! この……この人殺しッッ!!! 由理を返せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
自分かさえ分からない何かが叫んでいる。そしてその声を聞きつけて誰かが通報したのか警察が来た。
私は誰かに「大丈夫だから!」と抑えられ、でもそれでも当然涙は止まらない。そして先輩は警察に取り押さえられて無機質に笑って呟く。
「無様だなァ……“コイツ”も、お前も……ひゃはははははははははは! くくくくくくくくくくくく! あははははははははははは…ッッ」