ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 逃げきれぶち殺せ生き残れ!宗教団体あいのうた教オリキャラ募集 ( No.18 )
- 日時: 2010/10/29 20:10
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: jM89U6Tv)
不知火は迷い無い足取りで森の中を進む。置いて行かれないように、必死で和歌子は追い掛ける。
この島は南の方にあるのだろう、冬なのにそこまで寒くはなかった。しかし森の中は湿気が酷く、とてもじめじめとしていた。その上、月が出ていないので辺りは真っ暗なので、少しでも気を抜いたら、不知火の背中をすぐに見失ってしまうだろう。
「きゃっ!!」
足元の蔦に引っかかり、和歌子は転び、地面に叩きつけられる。
不知火はこれには振り返り、和歌子に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
すぐに和歌子は立ち上がり、服に付いた泥を払い落とし、また二人は歩き出した。
その様子を、木の上からスーツを着た男が見つめる。
「予定より早いですねぇ……」
男は携帯電話を取り出して電話をかける。
『もしもし?』
青年の声が電話に出る。
「小山です、予定に狂いが生じました」
『子海か……何があったんだよ』
ニコニコとしながら陽気な声で喋る小海とは対照的に、電話の相手は非常に苛立った様子で受け答えをする。
「愛沢歌彦の娘を、生続者側が引き入れようとしてます」
『そんなに早く接触をしやがったのか!?……まぁいい。どうせそのままじゃもう死んでた女だ、ボディーガードをしてくれるなんて、こっちの仕事が減る』
「左様で」
ブツリッと電話の向こうの青年は電話を切る。小海は携帯電話を圧し折り「折れちゃった〜」とへらへらと言いながら、木から木へと忍者の様に飛び移りどこかへ消えていった。
「あの、不知火さん……一体どこに向かっているんですか?」
小走りで不知火に着いて行きながら、恐る恐るとした声で和歌子が聞く。
「安全地帯」
それだけ言って不知火は無言で歩き続け、和歌子も決まりが悪そうな顔で追いかけた。が、ある場所で突然、不知火がピタリッと足を止める。和歌子が不知火の背中にぶつかって尻餅をつく。
和歌子には振り向きもせず、不知火は草木に紛れている切り株を蹴る。すると切り株はあっさりと蹴り倒されて、そこにぽっかりとした穴が現れる。
「入れ」
穴を指しながら不知火は和歌子に言う。和歌子は黙って頷いて、恐る恐ると穴を覗き込んだ後、端にある梯子で穴の中を降りる。少し梯子を降りると、すぐに下から明かりが見え……
「へ、部屋……?」
梯子から降りた和歌子は、玄関のような場所に降りて、きょろきょろと回りを見渡す。穴から入った部屋は割と広く、和風の落ち着いた雰囲気の良い部屋だった。
続いて不知火も部屋に入り、玄関のような場所で靴を脱ぎ、部屋の中心の炬燵に入る。
「あ、メールの子だ!カモン!カモン!そんな所にいないで早く炬燵にインしなイン!」
炬燵の中から変な口調の、おでこの上と正常に位置に眼鏡を二つかけた奇怪な女性が這い出て、和歌子に手を振る。
「え、あ、はい」
和歌子も靴を脱ぎ、炬燵に近づく。
「おお!予想よりもビューティーな女の子だね!」
「?……ありがとうございます」
妙に高いテンションに着いていけず、和歌子は愛想笑いをしながら答える。
「エブリワンが集まったら詳しい事スピックするから、あ、マイネームは藤木マリモネットね!それじゃおやすみ!」
そう言って、マリモネットと名乗る女性はまた炬燵の中に潜り込んだ。不知火は蜜柑を食べていた。