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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あたしとあなたの滑稽なバイバイ ( No.1 )
- 日時: 2010/10/30 11:45
- 名前: 卵白 ◆7qRx8xrwgo (ID: JkVnDcbg)
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こつ、こつ、こつ、こつ。
がたん。
堅い音が、部屋中に響く。
こんこんとノックの音がして、
重そうな扉が開く。
入りこんできたのは、黒い影と、信じられないほど冷たい風。
部屋の中央の椅子に腰掛けた少女は、くすくすと笑った。
「何の御用かしら」
「「「お嬢ちゃん、鏡を貸してはくれないか」」」
「ええ、いいわ。代償は?」
「心臓?」
「生き血?」
「それとも目玉?」
影がぼんぼんと分裂して、楽しそうに聞いた。
「そうね」
少女も、それに楽しそうに答える。
「生き血がいいわ」
「「「そうか、それならお安い御用」」」
「カナリア、来なさい」
「…もう、僕は雑用係じゃないっての!」
「羊皮紙とインクを持って来なさい」
「…」
「「「お嬢ちゃんは強いんだねぇ?」」」
「ええ」
「「「それなら安心だ。鏡をしっかり守ってくれよ」」」
「もちろん。それは約束するわ」
「はい、グレイ様、持って来ました」
ちいさな小鳥が持ってきたのは、くるくる巻いた羊皮紙と、赤いインクつぼ。
少女グレイは、インクつぼに指を浸した。
羊皮紙を広げ、文字を書きつけて影に見せた。
「これでいいのね?」
「「「もちろん」」」
グレイは羊皮紙を半分にして、半分を影に投げた。
影に羊皮紙は染み込んで、見えなくなった。
「契約完了ね。どうぞ、鏡の部屋に」
「「「ありがとう」」」
影とグレイは、その部屋を出た。
薄暗くなったその部屋で、カナリアは言った。
「かわいそうにあの影…また食べられちゃうのかなぁ?僕の知ったこっちゃないけど」
部屋の中から小さなざわめきが起こった。
「カナリア!そんなこと言っちゃ駄目!」
「また食べられちゃうの?」
「わたしなら食べられたくないわ」
そして、鏡の部屋から何か物音がして、グレイが戻ってきた。
そう、あの影は、こちらに戻ってきたらグレイに食べられちゃうんだ!
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