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伍ノ章「月光血色」

もう夜になっていて、青白く輝く月が奇妙だった。

「……これから乙女と少女がたどる運命を見せてあげなさい。
　逃げようと思っても無駄よ。どう足掻いても逃げられないから」
「対戦開いては神狩 彌華、天使。両者は前へ」
血まみれになった舞台上に、天使と彌華が立つ。

「天使だからって、手加減しなくていいよ」
「……手加減なんて、する気ない」
2体とも鉈を持ち、開戦の合図を待つ。
「始め」
冷たい声で放たれた開戦と同時に、鉈と鉈がぶつかり合う。

「ねぇ、この勝負……。どっちかが死ぬまで続くの?」
不安げにイヴを見上げるのは白星 光。
「そうよ」
「なぁ、どっちが勝つか予想できるか?」
「予想なんてものじゃないわ。必ず天使が勝つ」
「何故だ?」
何の迷いもなく放たれた言葉の意味を問うのは黒影 闇。
「天使の方が舞台の経験が多い。天使が負けることはあり得ないわ」
「……」

その言葉通り、天使が彌華の右腕を斬り落とした。
大量の返り血を浴びた天使の目は、恐ろしく見開かれていて、血走っていた。

「私たちも、この舞台に上がるですか?」
「そうだよ、姉さん。逃げられない、永遠にね……」
生まれた喜びを知った後、死への絶望を見せられた。