ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ペルセウス ( No.7 )
日時: 2010/12/05 16:59
名前: クロス ◆YnxfJR0Rdc (ID: rXEJOjNA)

2話 「NO.…」
男は、久しぶりの朝日に目を細める。
まだ朝の5時だというのに都会というだけあって人が多い。
自宅に帰り、家の一番南、日当たりの良い部屋へ向かう。
男…田代楓は、まだ幼さの残る実の妹の頬を撫で、彼もまた目を閉じた。

11年前 (楓)
俺はまだ7歳、妹の颯はあと2ヶ月で6歳という幼い頃、父と母は、金のために国の研究所に俺たちを売った。
俺たちは研究所に連れて行かれ、他に集められたたくさんの子供達としばらく暮らしたが、なぜか、俺と颯だけが他の施設に移された。国はそれを違法と知った上で「養子」ということで見逃した。
そして、戸籍も作り変えられた。権力というもので。
また、自分と妹は「田代」と「山本」という嘘の姓を与えられた。
つまり、楓と颯は赤の他人となった。
自分たちのほかにも集められた子供はたくさんいたが、何故か楓と颯だけが他の施設に移された。何をするのか分からない。ただ真っ白な空間に閉じ込められた。
それがどのくらいの時間だったかは分からない。時々不安で震えていると、颯は手をギュッと握り締め微笑んでくれた。
しかしある時、颯だけが部屋から出され、そしてしばらくすると戻ってきた。
颯に何度尋ねても彼女は何も答えてくれなかった。

……颯は別人になっていた。

何がなんだか本当にわからなくなってしまった。最愛の妹まで変えられてしまった。心に湧き上がったのは「悲しみ」と「憎しみ」。そして、「怒り」。
別人の妹は何かを話していた。もちろん自分に対してだ。彼女はずっと同じことを言っていた。
「わたしはNO.002。あなたはNO.001」と。
しばらくそれを聞いていた。妹の声が聞きたかった。例え、中身は別人でも。
これは自分の妹なのだ。そう言い聞かせた。
その最中、空間の扉が開かれた。自分たちは久しぶりの朝日に目を細めた。
妹はいつもの疾風に戻っていて、気がつくと自分だけが「教授」と呼ばれる女の前に連れて行かれ、話を聞かされた。
颯が二重人格になったこと。それを切り替えるにはウナジのスイッチを同じ血が通っているものが押さなければならないという事。颯がスイッチ人間になったのは研究のセイだということ。
自分たちはコードネーム「カエデ」と「ハヤテ」だということ。また、実験体NO.001と002であること。
あの白い空間で眠っている間、ハーパード大首席卒業者並みの知識を施されたこと。そしてこれから、国の極秘任務間「カエデ」と「ハヤテ」として一生働き続けるということ。
研究によって記憶が混乱し、颯は楓のことを同い年の従兄弟と錯覚していること。そのほかの設定などを聞かされた。
楓は一度に重大すぎることを山ほど聞かされたことより、目の前にいる「教授」と呼ばれる女が化け物にしか見えないうことで頭がいっぱいいっぱいだった。
口をぽーかんと開けていると女はにっこり笑って一言言った。
「大丈夫。あなたたちの命はこちらからいつでも切れるんだから。馬鹿なことは考えないでね?」
—それから月日は流れ、気がつけば十一年たっていた。
楓の中にあるのはいつだってあのとき芽生えた「憎しみ」がそして彼は「憎しみ」から解放される日をずっと夢見てきた。
窓の外を見ながら楓はつぶやいた。
「……最後に笑うのは俺だ。そして……
……いつまでも幸せでいるのは颯だ……」
と、目覚まし時計のアラームが響く。
「あれぇ?楓?何でいるの?まぁ、おはよ」
間の抜けた声で颯は話す。
「ああ、おはよ。颯の部屋に読みたい漫画があって。ごめん」
「いいけどさぁ。いくら従兄弟だからって……」
こうして楓と颯の日常は過ぎていった。




=後書き=
いやぁ〜長いですね読む気失せますね(笑)
でもでもまだまだ2話は続くんですよね〜(泣)
長過ぎるとクロスの気も滅入るので3話にまわします。

本当に読んでくださりありがとうです★
クロスでしたー☆