ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 狂人の遊び 過去へ“終焉”の知らせを放つ刻 ( No.199 )
- 日時: 2011/01/14 22:25
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: 07JeHVNw)
- 参照: http://ameblo.jp/pokemon19/
第81話「弟」
幻道からは血が離れていく。
幻道を嫌悪して離れるのではなく、刃が刺さることによる出血。
その刃は双剣の刃。
光と闇が幻道を貫いた。
「うぐわっ・・・・!!」
「ふん。まだまだ行くぞ。」
痛い。
痛い。
ばあちゃん・・・助けてくれ。
俺、もう死にそうだよ。
幻道の心の中に弱音を吐く声。
だが、その声は届かない。
周りは血だらけ。赤の床。
生々しく残酷。これを見れば2.3日はご飯が食べれないだろう。
「これだけでは、まだ死なんだろ?なら、お前の音速でしとめる。」
黒沢は一瞬にして消える。
すると体から血が無数に吹き出る。
最後の一刺しが幻道の肺に突き刺さる。
「カハッ・・・・!」
幻道は正気のない目で血を見る。
その後、倒れた。
(そんな・・・。ばあちゃん、俺負けたよ。簡単に倒せるって思ってたのに・・・。)
黒沢が双剣を地に置く。
幻道をじっと見つめる。
その目は悲しそうな目。なんともいえない目。
幻道は顔をそらした。
そらすくらいしかもう力が残っていない。
このままなら死ぬ。絶対に死ぬ。
でももう負けたんだ。もう全部出し切ったんだと、幻道は思った。
すると黒沢はぼそりと小さな声で呟いた。
「なあ、秋斗。俺はどうすればいい。このまま人を殺す運命を辿っていいのか?お前が居なきゃ、俺は・・・。」
幻道は途切れ途切れの口調で黒沢に聞く。
「・・・誰だ・・・それ・・・。」
「・・・双子の・・・弟だ。折角だ。教えてやる。」
俺たちは双子そろって能力者だった。
俺は盗争心。弟は嘘<ライアー>。二人とも泥棒が持つような能力だった。
でも、気に入っていた。騙したりするのは好きだから。盗んだりするのが好きだから。
世界の異変には気づいていた。
人を全く見なくなり、小さな動物だって居ない。
普通じゃ無理だと思った。だから行ったんだ。釈朱の元へ。
まあ、偶然通りかかっただけなんだが・・・
泥棒の勘か知らないが、弟は「ここだ」と言った。
俺は信じた。だって弟だからな。
そうすりゃ、黒いマントを着せられ・・・
釈朱はこういったんだ。
「お前らは、黒の刺客。いや、お前はだな。」
俺のほうを指差して笑う。
嫌な予感がよぎったんだ。泥棒の勘。
弟は力不足だってよ。だからせめて黒い彗星の生贄になれってよ。
「ふざけるなッ!!!」
その手は弟には触れなかった。
その時の秋斗の顔を覚えている。泣きそうで泣きそうでない顔。
半分怖かったけど、ああやっぱりって感じの顔。
感情をどういうふうに表せばいいんだ。
よくわからなかった。
どうすればいいんだ。
戻ってきてくれ・・・秋斗・・・!
だから俺は闘うんだ。
闘えば怖くない、闘えば強くなる。
だから、闘うんだ。
「ふざ・・・・けるな・・・・。」
幻道は黒沢を睨みつける。
(闘えば、どうにかなるだと?イカれてるぜ、コイツ。)
黒沢は後ろを振り向く。
下を俯いた後、幻道から去っていく。
「弟はんなこと・・・望んでるっつーのかよ・・・。」
「・・・うるさい!!!!死ねッ!!!!」
刃が幻道を狙う。
そして振り下ろす。