ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 狂人の遊び 過去へ“終焉”の知らせを放つ刻 ( No.219 )
- 日時: 2011/01/16 09:59
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: 07JeHVNw)
- 参照: http://ameblo.jp/pokemon19/
第89話「聖者は捨てた」
殴り合いが続く。
川西の武器は、朱嵐の蹴りによって破壊された。
正直、頭脳派で闘う川西の検討はずれであった。
まさか蹴り一発で硬い武器を粉砕するなんて・・・。
「えぇい!!」
朱嵐は川西の肩を踵落としを喰らわせた。
肩はいっきに下へ下がる。
それほど大きな衝撃だったのだろう。
骨を変形させたようだ。
「くはっ・・・!や、やりますね。私の体力では無理なようです。」
川西はキラリと眼鏡を光らせる。
すると、川西の周りに青白い光が・・・。
「ん?必殺技・・・?」
朱嵐はビッと構える。
だが、川西は「ふっ」と鼻で笑った。
「違いますよ。僕の能力発動です。」
「あぁ、真似しっこね。っで、何真似したのさッ!」
朱嵐は腹に一発パンチを食らわせようと狙った。
だが、守られてしまう。
「あなたの運動能力を真似らせていただきました。」
川西は朱嵐の頬を殴る。
さっきとは力が違う。
今の川西は朱嵐と同じ攻撃力と運動神経を兼ね備えた状態。
朱嵐にとってちょっと辛い戦いだ。
「いってぇ・・・。全然力が違うじゃん・・・。」
「勿論です。僕は貴女と同じ状態ですから。」
「よーし。魂のぶつけ合いか。」
蹴る音や殴る音が聞こえる。
飛ばされたり、守ったり。
格闘ゲームを自分たちで動いてるような気がする。
「でぇい!!」
朱嵐の足が川西の頬に当たる。
「はぁっ!!」
川西の拳が朱嵐の腹部にあたる。
「うっ・・・!!」
「貰いましたよ。」
口についた血を拭い、朱嵐に襲い掛かる。
朱嵐は素早く腕を出し、川西の連続攻撃に耐える。
「くっ・・・。まだそんな力が残ってるとは・・・。」
「ん?」
朱嵐は川西のズボンや服に目をやる。
そこには十字架のアクセサリーが多数ついていた。
黒の刺客らしくないと思った。
(あ、そうだ。ちょっと回復がてらに、十字架のこと聞いちゃお。)
朱嵐は「ねぇ」と川西を呼ぶ。
「あんたさ、いっぱい十字架つけてるけど、キリスト教とか好きなの?」
川西は少し下を俯き、喋らない。
なんか嫌なことあったのかと朱嵐は気になり、川西の元へ行く。
顔を覗き込むと、悲しい目をした川西がいた。
「えぇぇぇ。さっきのあれはど〜したの!?なーんでそんば顔してるわけよ。」
「聖者は捨てました。」
俯く川西の口からでる言葉。
元聖者かと思われるその言葉。
「僕は生まれつき、能力者で友達に気味悪がれ、人っ子一人近づきませんでした。自分の生きているこの世界は自分を拒絶し、生きる道を壊す世だと。でも、僕のお父さんは言ってくれました。「神は困るものを救う」と。だから僕は聖者になりました。神に一番近づきやすい存在だから・・・。でも、一向に何の兆しも来ない・・・。僕は神に騙されたんですよっ!!ペテン師だ・・・。」
「それって、ただ単に神様にすがり付いてる自分が悪くないの?なんで自分でしようと思わないのさ。だっらしな。」
川西はバッと顔を朱嵐に向ける。
「神様ってね、自分で何かして呼ぶんだよ。神様はいっそがしいから自分では来ないけどねー。」
「そうですか・・・。闇の道を通った僕は、もう神は・・・。」
「心入れ替えなよ!人間ってさ、簡単に変われるものだよ。」
川西は唇を噛む。
自分は愚か者だと。自分で何もせず、ただただ兆しを待つだけの人間だと。初めて気づく自分の本性。
ショックでたまらない。
川西は拳を構える。
「さあ、続きと行きましょう。なにかスッキリしました。さっきの鈍い僕とは違いますよ。」
「そうこなくっちゃ。一発で倒す・・・!」