ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 狂人の遊び 過去へ“終焉”の知らせを放つ刻 ( No.240 )
日時: 2011/01/21 20:13
名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: 07JeHVNw)
参照: http://ameblo.jp/pokemon19/

第102話「人形は友達」

所変わり、ここは古い神社。
和風の雰囲気が流れ、大きく神々しい寺が立っている。
青いキャミソールを着た女性が石砂を歩きながら、寺を見上げる。

「これが、日本独特の神社ってやつかぁ。こんなことしてなきゃ普通の世界なんだろうケド。」

長い石砂道を歩き、本堂へ入ろうとしたときポトッと何かが落ちた。
女性はくるりと後ろを向き、落ちたものを拾い上げる。

「これ、人形じゃん。」

ウサギの人形だった。ものすごく古いようで随分使い込んでいるようだ。
穴を糸で塞いだ後などが見当たる。染みもたくさんついているようだ。

「おいおいおい、気味悪い人形だな。もうちょっと可愛げがないもんかね?」

そのウサギの人形は、目が真っ白で空ろな目をしていた。
口をあんぐり開けている。神社でこんなものが勝手に落ちてきているのはちょっと気味悪いなと女性は思った。

「ちょっと、返して・・・・・・。」

本堂の隅で声がした。女の声だ。
女性は周りを見回す。すると本堂の大きな柱から、おかっぱ頭のセーラー服少女が出てきた。

「私の。返して。」

「うっ、あぁ・・・ハイハイ。」

エピカの女性、サランは気味の悪い人形を気味の悪い少女に渡した。
少女は何も言わず、ウサギの人形を受け取った。サランはなんとなくだが、聞いてみた。

「ねぇ、アンタさ、何者?」

「・・・善を刺す黒き客。」

「はに?」

サランは意味がわからず、「うーん」と唸った。
しばらく時間が経ち、「あっ」と声を出す。

「黒の刺客ってこと?」

少女はコクリとうなずいた。サランは頭をポリポリ掻き、はぁとため息をついた。

「じゃあ、闘わないとね。イヤだなー、そういうの。」

「私はいいよ・・・・・。」

虚空の目がサランをじっとみつめる。サランはちょっと驚いたが、「なんで?」と聞いた。少女は人形を手にはめながら答えた。

「私はどうなったっていいよ・・・。友達さえ生きていれば・・・それでいい。」

サランはチッと舌打ちをする。どうしてその優しさがあるのに黒の刺客して世界の絶望を手伝っているんだと。優しさ一つでこの世は救えるのにと心の中で少女に訴えた。

「覚悟しなよ・・・。あたしは、手加減しないから!」

「私もよ・・・。友達さえ居れば、私はどんなときでも生きられる・・・・。」

サランは棒を取り出し、振り回す。だが、少女は武器を出さなかった。サランは「ん〜?」と少女を見回すが、武器らしきものはなかった。

「アンタ、武器は?」

「お友達・・・。」

人形をバッとサランに見せ、ウサギと猫の人形を手にはめる。

「お友達と・・・戦う。」

サランは、棒を構える。少女は闘う気マンマンのサランをじっと見ている。一応これでも戦う準備は出来ているとサランは思った。

「アタシは、サラン。サラン・カファル・エル・リグナール。アンタは?」

「・・・原田 明実。」

「よし、原田ぁ!!歯ぁ食いしばれよぉ!」