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Re: 狂人の遊び オリキャラ募集中! ( No.46 )
日時: 2010/11/14 21:23
名前: 月夜の救世主 (ID: 07JeHVNw)
参照: 朝のコーンスープはめちゃうまし。

第19話「狂神 黒影の出生」

そんなはずじゃなかった・・・

ボクはまだ早かったのか・・・。

狂人の遊びの主催者には・・・まだ早かったのか?





狂神 黒影は狂神と人間の間に生まれた者だった。
母が人間、父が狂神。

父のガザールは人間観察のためにこの現世に降りた。
人間達の暮らしを見て、正直呆れた。

人々は欲望のまま動き、欲望に飲み込まれる。
ならば、人間など要らないと思った。
だから、あのゲームを主催しようとした。

だが、それは中止された。ある1人の女性が中止させたのだから。

ガザールがある神社に足を運んだ。
そこには、お経を静かに唱える女性が座っていた。
名は、霧子。
その声はガラスのように透き通り、清らかだった。

するとお経はピタリと止む。
女性は仏壇を静かに見ながら、口を開ける。

「おやめなさい。あなたにはそのようなことは出来ませんよ。」

まるで何もかもお見通し・・・そんな感じだった。
ガザールは下を向き、そのまま走り去る。

女性はその後姿をやさしく見守った。

その夜、ガザールはあの女性を忘れられなかった。
あの清らかな声、優しい眼差し・・・全て。

ガザールは「いかんいかん」とばかりにまた人間観察に出かける。

その翌日、ガザールはあの女性に無性に会いたくなった。勝手に足が動き、背中が押される。

寺の本堂はシンと静まりかえっている。
すると奥から、あの女性が歩いてきた。
女性はまた優しい顔で微笑む。

ガザールは思う。

これが恋なのだと。

それからというもの2人は付き合い、結婚した。
その1年後、赤子の泣き声が轟く。

そう、狂神 黒影である。

狂神はすくすくと育ち、1年生になった。
みんなと同じ、普通の学校に通い普通に暮らす。
だがその普通の生活は長く続かなかった。

ある日の放課後・・・

狂神は友達と遊び、家に帰って来る。
いつものように母が玄関まで来てくれる。

「どうだった?今日も楽しかった?」

「うん!とっても楽しかったよママ!」

そんな話を2人でしていると、リビングから
ガザールの叫び声が聞こえた。
霧子は狂神をかばいながら、リビングへ走る。

そこにはガザールの首を掴む、牛の頭蓋骨のようなものを被った者がいた。

ガザールはどんどん透けてゆく。

「あ、あなたは・・・一体・・・!?」

霧子が謎の人物に問う。
すると、頭蓋骨から声がした。

「この狂神は掟を破った。狂神は必ず1度は現世で狂人の遊びを開催せねばならない。だが、開催させなかった。だから、罰せられる。」

霧子は「そんな・・・」と小さく呟く。
狂神は霧子のエプロンを掴み、

「ねぇ、パパは?パパは何処行っちゃったの?」

と、弱弱しく聞く。
霧子は少し作り笑いをして見せ、狂神をなだめた。

「大丈夫。戻ってくるから・・・。」

すると頭蓋骨は霧子の腕を掴む。

「な、何するの!?」

「貴様も処刑する。狂人の遊びを止めたのは貴様だろう?」

そうだった。霧子が止めたんだ。
霧子はハッと思い出す。
そして涙をこらえ、狂神に最後の言葉を残す。

「大丈夫!パパやママはあなたのそばに・・・いつもいるから・・・。お願いだから、狂人の遊びだけは・・・しないで!」

そういい残すと、霧子と頭蓋骨は消えてしまった。
狂神はシンと静まり返ったリビングに独りぼっちだ。

「パパ?ママ?どこなの?」

狂神はタンスの中やベランダ、押入れをあさる。
だが案の定いない。
もう二度と戻ってこない。



それから6年後。
狂神は中学1年生になった。
親はいない。いるのは自分だけ。

親子を見ると無性に、いらだってくる。
嫉妬である。

(どうして、自分だけなんだッ!!)

その一瞬で狂神は初めて、神としての力に覚醒する。
狂神の周りは爆発し、車は狂う。
自分でも不思議だった。だがすぐ分かった。

だってなにしろ、神の子だから。

そしてなぜか決意してしまう。
大好きな母に止められたのに・・・。

「狂人の遊びをしよう・・・。」




そして現在。

黒獅子にまたがり、人の波に飲まれている。

「アンタ!狂神だろ!?」

黒薙は狂神を見て、問いかける。
狂神は鼻で笑う。

「そうさ。あぁ、勘違いするな。ボクはキミたちを助けに来たんじゃない。ボクの立場を取り戻すためにここへ来たんだから。」

黒薙は起き上がり、腕組みをする。

「わかってるよ。あんたがこんな親切しないでしょ?」

「おいおい、黒薙。キミはフラフラだろ?まずこの邪魔な人間を蹴散らすよ。」

するとバッと幻道が立ちあがり、狂神の首に双剣を突きつける。

「殺すな。殺さずに蹴散らせ・・・!」

幻道は思いっきり睨みつける。
狂神は「ハイハイ」とばかりに鼻で笑う。
すると手を開ける。すると空間が一部だけ歪む。
そして穴が開く。

「それ、もう一度戻りな、人間。」

するとその穴にどんどん人々が吸い込まれていく。
狂神は険しい顔をする。
黒薙はそれを見逃さなかった。

穴に全員入ると、一瞬にして穴は閉じる。
狂神は荒い息を吐く。
黒薙は腕組みをし、問う。

「えらく、らしくないじゃない。アンタなら異次元空間なんて余裕に開けるだろう?」

狂神はもうろうとしながら、黒薙に言う。

「ボクだって、疲れるときぐらいあるさ。さあ、ここらには釈朱はいないか・・・。じゃあここで失礼。せいぜい楽しみな!」

そういうと、狂神は黒獅子にまたがる。
黒獅子は猛スピードで大地を駆けた。

三木はふうと大きなため息をつく。

「ま、まずは・・・これで一件落着?」

黒薙は少し笑って見せる。
雪砂も起き、完全回復したようだ。

「さあて、もういっちょ歩くか!」

幻道は背伸びして言った。
黒薙たちはうなずき、無人の道路を歩いてゆく。