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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Return Days ( No.12 )
- 日時: 2010/11/18 20:06
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
どれぐらい作ったのだろう。
見渡す限り、自らの手で作った雪だるまがあった。
冷たい手で、必死に作った。
どれだけ念じても、雪だるまは動いてくれない。
動いては、くれない。
——どうして……動かないの?
呆然と、僕はそう呟いた。
表情がそれぞれ少し違う雪だるまたちを見渡しながら、
僕は、泣いた。
どれほど泣いただろうか。
泣いても泣いても、何も動かず、何も始まらなかった。
あぁ、これが一人なんだ、と。心から思った。
何て、何て悲しいのだろう。この世界は、そして、僕は。
涙が、止まらない。いや、止めたくなかった。
止めたら、感情がなくなるような気がして。
本当に、一人になるような気がして。
——僕は……どうしてここに生まれたの?
自分の作った雪だるまに問う。
しかし、表情は変わらない。少し笑ったような顔で雪だるまは僕の顔を覗く。
——もう……いいや。
何もかも、やめてしまえばいいと思った。
もう一度生まれ変わったら、いいと思った。
僕は、白い草原の中へと倒れこんだ。
だんだん体が冷たくなるのが分かる。それも急速に。
——あぁ、悲しいな。
ゆっくりと、目を閉じた。
だが、その時ふと、手に優しい暖かさが伝わった。
それは僕の全てを優しく包み込むようだった。
僕は顔をあげた。
そこにいたのは、一人の少女だった。
——よかった。一人じゃなかったんだね。
そう、呟いて僕は、意識を失った。
優しい笑顔を浮かべる可憐な少女の姿を後にして。
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