ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Return Days ( No.8 )
日時: 2010/11/05 22:52
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)

目が覚める。視界が瞬く間に広がっていく。そこに表れたもの。

それはそれはとても寒い、雪が舞い、草木も覆われた白銀の世界。

真っ白で、綺麗で、足跡をつけることさえも勿体無いと感じるほど。

でも、何か悲しかった。

それは、何も足跡がないから。何一つ。何にも、なかった。

それが意味するもの。そう、この世界には、誰もいない。存在しているものがいない。

それでも僕は笑った。

この世界には、誰もいない。誰も。

自分を、責めるものもいない。自分を、罵るものもいない。

そう、何もないんだ。だからこそ、良かった。


ここなら、死んでも構わないと。


僕は歩き出した。地面に広がる銀世界に心の中で謝りながら。

——ごめんね、ごめんね。辛いよね。

なぜだか、そう呟いていた。

——辛い…のは?

辛いのは、誰なのだろう。

——悲…しい?

悲しいのは、誰なのだろう。

——泣き…たい?

泣きたいのは、誰なのだろう。

何でそんなことを思うのか、全く分からない。

自分はここで生まれたのか、そもそも、生きているのか。


それすらもわからない。


自分の手足がだんだん冷たくなるのを感じる。

——感じる。感じる。感じる?

——あぁ、そうか。そうだったのか。

僕は歩みだす。この美しい銀世界を。

僕は、感じている。つまりは、生きている。


ここに、この銀世界に存在しているのだから。