ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Return Days ( No.9 )
- 日時: 2010/11/11 23:33
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
「ッ……?」
目を開けると眩しい光が自分の顔を照らす。
日の光ではなく、これは恐らく部屋の電気だと思われた。
自分は電気を消さずに寝てしまったようだな、と簡素なただ広いベットからゆっくりと起き上がる。
視界がまだボヤけ、うっすらとしているために何がなんだかわからない。
とりあえず目を擦り、背伸びをしてから時間を確認しようと頭の中で算段をつけ、立ち上がろうとした時。
目の前に、扉の前に、見知らぬ男がいた。
「……?」
状況が全く把握できない。
「…誰?」
扉の前で呆然と晴樹の顔を見ている少々茶髪で一本の長いアホ毛の目立つ男…?を見ながら言った。
(…男、だよな?)
その男と思わしき人間は、顔がまさに女顔だった。
性別が確認するのが曖昧なためだろうが、正直晴樹は焦った。
しばしの沈黙。何を言えばいいのか分からない。
(まいったな……。もしかして、間違えてるのって俺か?)
とはいってもこの部屋が自分の部屋なのかどうか確認出来るものがない。
だが、確かにこの605号室のはずだ。何度も確認した結果だから自信がもてるはずなんだが…
そうやって晴樹は心の中で葛藤を繰り返し、とりあえず話しかけようとした。
「な、なぁ——」
「あ〜〜〜〜〜!!」
…いきなりなんなんだ?
しかも今の時刻を確認すると7:00を指している。
1時間も寝たことに驚くところだが今はそんなことに驚いている場合じゃない。
まず、この不法侵入者の所在が——
「今日からよろしくねっ!」
「……は?」
いきなり近づいてきたかと思うと、晴樹の手を取り、満面の笑みで言った。
こうやって近くで見れば見るほど女子っぽかった。
しかし声を聞く限り、果てしなく女子っぽかったのだ。思いっきり女声。
もし女子だったらと考えると自然に頬が熱くなる。
「お前……一体?」
別の意味も兼ねての質問を投げかけた。
するとその女子っぽい奴は笑顔から一転してキョトンとした顔をしたかと思うとまた笑顔に戻し
「僕は早坂 憐(はやさか れん)! この部屋の、ううん、"君の同居人"だよっ!」
「——ちょっと待て」
今さっき、というか最後の方におかしな単語が混じっていたような気がする。
「うん?」
憐は首をかしげ、何事かというような顔をして晴樹を見つめる。
「……同居人ってどういうことだ?」
そんな晴樹の言葉に憐は笑って
「あはは、そのまんまだよ〜! 僕も今日からここに住むの! よろしくね?」
笑顔で手を握ってきて、ぶんぶんと上下に腕を強引に振り回された。
「この部屋って一人専用の個室じゃなかったのか?」
晴樹がそう言うと再びキョトンとした顔を憐はした後に再び笑う。
「あはは、違うよ〜。そんな豪華な学校じゃないよ。一部屋確か3人までだったと思うよ?」
「うぁ……」
なんていうことだ。なんで自分はちゃんと書類を見ていなかったのだろう。
きっとどうでもよかったからだろうが、一人になりたかった晴樹にとってはかなり面倒くさいことだった。
むしろ、迷惑だと感じるほどに。
晴樹が手を頭に抱えて、悩んでいるような苦しんでいるような感じに対して憐はにこやかに笑っている。
「……ということは後もう一人、ここにくるのか?」
晴樹の言葉に手を横に振り、人差し指を上に伸ばして憐は説明しだした。
「ううん。この部屋はまだ新しい方らしくてね? 僕と君……えっと?」
そういえば自分の名前を明かしていなかったことに今更気がつく。
「東雲だ」
「下は?」
下まで言うのか、と心の中でぼやきながらも答える。
「晴樹」
「晴れ晴れとした名前だねっ!」
…こいつは俺にケンカを売っているのか?
「あ、じゃあ東雲君って呼んで良いかな?」
「あぁ、別に構わない」
呼び方など、つまらないと思っていた俺は素っ気無く言った。
「じゃあはるっち」
「まて」
「え? 何かあった?」
さっきから相変わらずのキョトンとした顔で晴樹を見る。
「何かあったもクソもねぇ。いきなり名前変わってんじゃねぇか!」
「はるっちのこと? いいでしょ? 可愛いよね〜」
…全く聞いちゃいなかった。
「はぁ……もう好きにしろ」
「え? 何でそんな怒ってるの? あ、そうそう僕のことは憐って呼んでね? あだ名でもいいけど」
「誰があだ名で呼ぶかっ! ……って! もうこんな時間じゃねぇかっ!」
時計を見ると時刻は7:30を指していた。
「あ、うん。本当だね?」
「呑気にしてる場合かよ……。俺は行くからな?」
「え? あ、ちょっとまっ——」
後ろから何やら自分を呼び止めるような声が聞こえたが、晴樹は無視して外へ出た。
歩きながら、また思い出す。
ここで最初に会ったあの少女のことを。
(……なんで俺は今日会ったばかりの奴のことを気にしてるんだ?)
アホらしい、そう思った晴樹は目の前の一階へと続く角を曲がろうとした。
「わっ!」
「うぉっ!」
その角に、早坂 憐がいた。
「あはは、ビックリした?」
「……」
何も言わずに去ろうとする。
「あ、ちょっと! 待ってよ、はるっち!」
憐はまんま女の子みたいな声を出しながら晴樹の元へと駆け寄っていく。
身長もさほど憐はなく、自分より何十センチか下だった。
(こいつ……本当に性別どっちなんだ?)
そう思いながらも、晴樹は少々歩くスピードを上げてあらかじめ指定されていた場所へと行く。
転入生が集められるという、体育館へと向かっていた。
(俺の後をついてくるということはコイツも転入生なのだろう……)
歳は自分の方が上だろうが、と軽く鼻で笑った。