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拾八話「一時の幸福」

皆、俺を暖かい笑顔で迎えてくれた。アリカは笑顔なんて見せてくれなかった。
恐らく、心の中では“ほら見ろ”と嘲笑っているのだろうけど。

「さぁ、今宵の晩餐の生贄は聖だ」
「は……?」
俺はさっき“おかえり”と言われて、温かく迎えられたはず。

「一度魔界から離れた人間が、もう一度魔界で上手くやっていけるとお思いですか?」
冷たい声で包丁を持つのは鈴音。
「聖様には残念ですが……。こうなるのが魔界の掟です」
鍋やフライパンを用意しているのは歌音。
「あはっ、ざぁーんねぇーん! もう一度ここでやっていこうなんて甘いんだよ!!」
ナイフとフォークを持って食卓を叩く理。
「血は嫌いだけど……。聖のなら特別に飲んであげる」
ワイングラスを用意しているのは小百合。
「聖はとっても愚かだったから、美味しいよね!」
にっこり笑いながらスプーンを持つアリス。

「さぁ、裏切り者は腹の中に納めようか」
ひと際大きな包丁が、俺の腹に落ちた。