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Re: かごのとり。 ( No.5 )
日時: 2010/11/03 10:21
名前: 鏖 ◆TeAoSh7Hf6 (ID: OPVNjM8g)

壱話「迷子」

「どこだよここ……」
俺が大きな過ちを犯した日、変な世界に来た。
「なんか怖っ……」
赤やら紫やら、毒々しい色の湖。木の代わりに生えているのは人の腕。
草の代わりは人の髪。太陽の代わりに目玉、雲の代わりに顔。

「迷子の迷子の子猫ちゃん。貴方のお家はどこですか」
「うわっ!!」
呑気に歌を歌いながら、空から降ってきた女の子。
「名前は?」
「紺野 聖。ってかアンタ誰?」
「名前わかるの? つまんない……」
「だからアンタ誰?」
俺の質問は無視?
「……小百合」
そう告げてから俺の手を握る。
「なっ、何……」
突然手を握られてビビりながら照れる。

「行こ」
ニコッと目を細めて笑われて、照れる。
「(けっこーかわいい……)」
なんて思っていると、驚くことになる。
「おわっ!?」
俺たちが立っていた地面に黒い穴があいて、それに吸い込まれる。
「安心して」
小百合は逆さまになって、俺の身体も無理矢理逆さにする。
「安心できねぇ! 地面、地面っ!!」
すぐそこに地面は迫っているが、俺は逆さのまま。
「大丈夫、痛くない」

「どわっ!!」
俺は頭から落ちて痛ぇ。でも小百合は、どこで体制を変えたのか、足から優雅に降りてきた。
「運動神経なさすぎ」

小百合の後ろをついて行くと、立派な城。奇妙なのはドアノブが蒼白い手ということ。

「いらっしゃい、迷える子羊」