ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.118 )
日時: 2010/12/06 20:22
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

しばらくして、UFO内に携帯電話の着メロが響く。 しかも何故か阿部さんのバラライカ。
どうやらカイトの携帯電話らしく、UFOをその場に浮かべたままメールボックスを検索している。
しばらくすると、

「童子逃げれたってよ、良かった良かった。 死人が出なくて。で、」

そういうと、携帯の電源を落とし、シェリーの後ろを軽きにらみつける。

「……ユーリとアルテミス、居るんだろ? 出て来いよ」

不意に、カイトの口からそんな言葉が放たれる。 だが、ユーリはともかくネディに絡まれていたアルテミスが居るわけがない。
そんな先入観でシェリーは後ろを振り返る。 それと同時に、

「よ、シェリーちゃん。 今から俺とデート行こうぜ?」

「止めろユーリ、一応今は任務中だぞ。 俺は基本的に見ているだけだが、余り度が過ぎるようだと童子にお前の処分をしていいって許可をもらってるんだ。 大人しくしていろ」

そういいながら、アルテミスは腰の刀に手を伸ばすが、カイトがアルテミスに止めるよう毒を吐く。 すると、アルテミスは一瞬にして萎んだ。
……何が起きた?
不思議そうに眺めているシェリーにじりじりと近づいてきたユーリにもカイトは小声で耳打ちする。 すると、やはりユーリも一瞬にしてなんだかネガティブな状態へと陥った。

「……な……何を言ったらこうなるの?」

「女の子は知らない方がいいこと。 さて、もう着いたよ」

そういうと、船体が水に降り立ったのだろう。 慣れない浮遊感が体を浮かす。
恐らく衝撃が内部の人間へ行かないようにする安全装置なのだろう。 着陸は相当下手と見た。
入り口を開く前にカイトがUFO内部の機械に手をかざす。 すると、その機械はそれ単体で置いてあったのだろう、電源が入り、空中にモニターが出現する。 それを眺め、カイトは絶句した。 
しばらくして、UFOが再び浮き上がる。

「陸地へ行くぞ、水中は敵がわんさと居る。 クラウンも多分陸に上がっただろ」

そういうと、近くの岸辺へ行くには余りに高い所を飛んで岸辺へと降り立った。 音を立ててUFOの扉が開かれる。 どうやら誰かが先に待機していたらしく、よってくる人影が見える。 
それを見ると同時にアルテミスはUFO内に逆戻りすると身を隠すかのように機械の裏へと隠れた。
人影はどんどん近づいてくる。

「やっほ、遅かったね。 まさかカイト君、こんな年上のお姉さまと何かやってたんじゃないのかな?」

その影は、アルテミスの行動を見た上での期待を裏切らなかった。 ネディが、にこやかにUFOから降りてきた三人を出迎えた。

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.119 )
日時: 2010/12/18 13:38
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

同時刻、栄王旅団拠点アジトにて__

「童子、久しいな。 かつて夜叉と呼ばれた英雄に敵視されるとは、俺もまだまだ捨てたモンじゃない良い男だなァオイ」

童子とサングラスのスーツ姿の男が睨み合う。 彼が誰かなど既に知れている。
クレイクロアの最高指導者、シグマ・タイムドレインだ。 彼は楽しそうに殺気立った童子を眺めている。 もちろんの事、童子の能力を持ってしても、時を戻されては勝ちようなど無い。
そのことは、童子自身も百も承知だろう。 だが、引くことなくにらみつけ、殺意を持ってその場に佇んでいた。

「どうやってこの場所を割り出した? どうせ貴様、俺の可愛い部下を半殺しにでもしたんだろうが……。 そういう行動をしなくてもまあ、殺すつもりだったがやはり……。怒りは抑えられねえな」

立てかけてあった大剣を童子はいとも容易く片手で持ち上げ、握りを確かめるようにクルクルと手の平で回した。
明らかにその剣は、刺す事が苦手な形状をしており、切っ先が無い。 それを見て、シグマは冷笑する。

「かつてのパートナーを刺し殺した事がそんなにショックだったか? それで先端恐怖症にでもなったか?」

シグマは冷笑しながら、大胆に間合いを歩いてつめる。 隙だらけだが、シグマは少しだけとはいえ時を戻せる。 如何対処すればいいのかは悩みどころだろう。 
シグマに対し、童子も動く。
両手で大剣を構え、考えなしに頭から突っ込む!
その表情は鬼神とでも言うべく憤怒の塊だ。 常人ならば近づかなくとも足がすくむその殺気をシグマはあざ笑うかのように突っ込んでくる童子との距離を縮め……、童子がシグマをぶった切る!
だが、シグマはやはり楽しそうに、大剣を受け止める。 明らかにシグマの反応速度は童子の剣よりも遅かった。 だが、時を戻すという行為が隙の無い童子に隙を生じさせていた。 
ワンパターン前の体勢に戻せば、受け止める事など容易くできる。
それを確認したうえで、童子は懐から四角い小型マイクを取り出すと、

「栄王旅団のメンバーに告ぐ。 じきにこのビルは跡形も無く吹っ飛ぶ、今できる限り遠くに逃げろ。 俺の救助は考えるな、自分の身を第一に考えた上で祖適切な行動を取るように。 誰でも良い、カイトにこのビルに戻らぬよう連絡しろ。 以上でおれの遺言は終わりだ。 お前らは呪われた俺と違って可能性に満ちた未来がある、なんとしてでも生き残れ!」

それだけ告げると童子はマイクを踏み潰し、

「さて、戦闘再開だ」

「いいのか? 死ぬぞ、能力の相性が悪すぎる。 時を戻せれば、神に匹敵する行動が可能! どういうことか、その天才的な頭脳は理解できるだろう? それとも、死にたいのか?」

双方が臨戦態勢に入り、しばらくの沈黙が続いた後に、シグマの口が開く。

「そう、俺は神として——…」

「どうなるかなんて、知るか。 俺は化け物らしく計算をして、如何に非情で残酷に貴様を殺せるかを探って、その通りに動くだけだ。 俺は、人類史上最も優れた頭脳を持っているということくらい、無知な貴様も知っているだろう? それに、さっきのは遺言だってハッキリ言った。 俺は貴様を自分の命を閉じてでも排除する」

シグマの言葉を遮るようにして童子は瞳の色を紅から深い青へと変化させる。 そう、魔術使用は負担が大きい。 
魔神の能力を発動するには、どこかを魔力の放出口にしなければ人間では自らが魔力に撃ち負けて、術者本人が消し飛ぶのだ。