ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ ( No.150 )
- 日時: 2010/12/13 14:02
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
不死鳥の塔__
そこは暗く、常に光は星の瞬きのみ。 塔の周囲を巨大な龍が飛び回り、陸地は何千年もの間に打ち上げられた死体が形成し、中心にはその死体のことなど気にも留めなくなるかのような巨大で、美しく紅い塔が建っている。
人間界とは別の次元に存在し、塔の高さは約6km、頂上から見れば死体の山がまるで砂浜に見えるそこに、能力者を作り上げた張本人が居た。
長い金髪を揺らし、青い瞳で塔の頂上から人間界を見渡す彼女こそが、ことの元凶だ。
呆れたような瞳で、椅子に座ったまま紅いコートを羽織り、塔の頂上から周囲を見渡し、時々ため息をついている。
「ヴァム、まだ天照からの人間の個体数削減の許可出てないの? もう数年でこの調子だったら人間滅亡しちゃうよ」
せっかく積み上げた積み木が倒れた子供のように残念そうな表情を浮かべる。
その横で、
「ええ、全然まだです。 後数年かかりますよ、緊急網の方で申請しましょうか?」
紫色の髪をした風変わりこの上ない海賊チックな格好をした青年が見た目とは合わない丁寧な口調で彼女の言葉に答える。 片腕が鍵の手だったらフック船長と言っても違和感が無い。
彼の紅い瞳が塔の頂上から周囲を見渡すと、
「ではアリソン、あのクラウンを使うべきではないのですか? 貴方が直接作った存在でしょう? 今現在人間を殺していいのは人間だけですし、貴方が間接的に関与していても殺したのが人間であればいいわけです」
その言葉にアリソンは椅子から立ち上がり、
「そうね、私は人間殺したら駄目だし。 クラウンをサポートして自衛するしかないよね。 私から見てもジェームズは危険すぎる」
塔の端まで歩いていくとその場から躊躇無く飛び降りる! それを確認した紅い巨大な龍が彼女達を背に受け止めると、空間を引き裂き姿を消した。
そう、魔力が存在し、魔神の眼球が存在するのだ。 誰が魔神の存在を否定できようか。
「ミゲル、アーレイン教会の御神体から人間界に出るから、戦闘準備しておいてよ。 ただし、ころしちゃ駄目。 分かった?」
龍はそれに返事をするかのように、グォォオと鳴くと、暗いトンネルを抜けて紅い巨大な扉を突き破って教会内に飛び込んだ。
「……おや、魔神が人間界(この様な所)に居るとは、意外だったな」
それを意外そうにジェームズの紅い瞳が睨む。 殺気は込められていない、だが、普通に背筋が凍りつき、足がすくむようなこのプレッシャー!
……龍が、ミゲルが怯えている。
「私から言わせれば龍を一瞥して黙らせる人間が居る事にも驚いたよ。 で、私を殺す気? 今なら無抵抗で殺されることになるけど——…」
教会内の神父の死体を見て、アリソンの青い瞳が紅く変化する。 それと共に憤怒の形相で、
「前言撤回。 ヴァム、なんとしてでも天照から人間削減許可書持って来い、何なら奪ってきても構わないよ。 その神父が、貴様に何をした?」
龍を剣に変化させると、殺せない事を承知でジェームズの左肩を剣が突き抜けた。
返り血が、紅いコートに良く馴染む。
それを見てジェームズは不快そうに苦笑いし、
「フン、無抵抗と言うのも信用できないな。 今ここで……貴様を殺し俺が新たなる魔神となろう。 ……その神父は、栄王旅団、パンドラ部隊の人間だ。 すなわち、奴は俺の敵。 殺したところで悪くはなかろう」
肩に刺さった剣を力ずくでアリソンから奪い取り、躊躇無く彼女の胸に深々とに突き刺した。