ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ ( No.151 )
- 日時: 2010/12/14 14:13
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
アリソンは胸に剣が突き刺さっている事など気にも留めず、ジェームズを殴り飛ばした。 それも飛ぶわ飛ぶわ、左のストレート一撃でジェームズは教会の十字架ごと壁に打ち付けられた。
女の力じゃない、普通に怪力だ。
「さて、いくつか質問させてもらおうか。 ジェームズ。 貴様、何処でそのオーバーアビリティを取り込んだの? スクラップでは取り込めないようにした筈なのに」
壁に打ち付けられ、いまや化石のように両手を広げ大の字に壁にはまっているジェームズの口が微かに笑っている。 それを深いそうにアリソンが睨み付けるが、大して殺気を放っていないところから質問に答えるまで生かしておくつもりなのだろう。
そのことは奴に余裕を与えているとも知らずに、
「貴様、一体何をした?」
アリソンはもう一度聞きなおす。
「フン、魔神の割には無知だな。……俺は“スクラップ”を進化させた。 レベル方能力者としては唯一のレベルⅥとしてこの世に君臨できるよう! 俺は俺の力を神に及ぶ物へと造り替えたのさ」
半分笑ながらジェームズはその質問に答えた直後だった。 教会の三つある扉のうち、中央の巨大な扉以外、御神体の脇にある二つの扉が同時に開く。
片方は、童子の任務で栄王のアジトにクラウンを連れて行くという任務を続行し、アジトである教会にクラウンと共に来た楓だ。
だがもう片方は、まったく見知らぬ男が楽しそうに微笑みながらマジックで使うようなバトンを手の中でクルクルと回していた。 白いコートに身を包み、クルクルとした癖のある紅い髪をヘアピンで留めて緋色の右目がジェームズに微笑みかけ、左目を黒いスペード模様のついた眼帯で覆っている。
不意にそいつは口を開き、
「やあ、ジェームズ。 助けに来たよ。 まったく、ボクの手を煩わせるのは止めてくれないかな。 ボクだって暇じゃないんだ、魔神は本気で殺しあってくれないって言うし、そこのクラウンとか言うレベルゼロは弱々しくてボクの興味を引くほどのものでもない。 本当にこんなひ弱な女の子集団が君は脅威になると思うのかい? ボクだったらこんな集団相手にしないな、もっと戦いにはスリルが欲しいところだろ? 君だって昔賛同してくれたじゃないか? それにさ、高々魔神の力を得てその後どうするつもり? 君さ、魔神の力をずいぶん過大評価しているようだけど、ボクに言わせればたいした事ない魔法と言う名の能力としてしか取れないな。 魔法だって万能じゃない事くらい既に割れてるし、天照レベルじゃあないとボクも動きたくないよ」
その言葉にアリソンは不機嫌そうな表情を浮かべ、クラウンと楓は呆気に取られたような顔をしている。
「天照レベル? 無理言わない方がいいよ、人間に超えられるそれじゃないか——…」
「ボクはただ単純に戦うのがすきなんだよ、相手の嫌がる顔を見て、もっと嫌がらせて。 それほど素晴らしく面白い事は無いとボクは思っているんだけど、君は如何思——…」
「黙れクロア。 この性格破綻したドS戦闘狂めが。 早くここから撤退するぞ、魔神相手ではこっちも分が悪い」
アリソンの言葉を遮りしゃべり始めたクロアの言葉をジェームズが遮って命令する。 だがクロアと呼ばれた大胡は不機嫌そうな表情を浮かべ、
「ええ? 君一人で勝手に撤退してくれよ。 ボクは戦いに来たんだよ、相手の嫌がる顔見ながら楽しくいたぶる楽しみが伸びちゃうじゃないか。 そんなのボクは認めない!」
その言葉と共に、ヘアピンを一本抜くとジェームズの打ちつけられていた壁をあろうことか粉々に打ち砕き、そんなものに興味は無いとでも言わんばかりにジェームズを一瞥するとクラウンの方を向いた。 楓が臨戦態勢に入っている。
「君がクラウンかい? ううん、噂どおり可愛い顔してるね。 でも、僕はその顔を壊すのが好きでさ」
クラウンとは反対側の扉に居たクロアが瞬きをする間にクラウンと楓の目の前に接近する。
——!
楓がいつの間にか手の中に出現させていた刀をクロアに向って振るうが、クロアはひょいと避け、刀を弾き飛ばす。
「危ないな、ボクは別に危害加えに来たわけんじゃないんだってば。 でもま、さすが童子君の狂信部隊アンノウンの楓ちゃんだね。 今のを見ても能力の真相候補が多すぎてどれだか分からないや。 正体不明まさにその通りじゃないか。 ボクの所で働いてくれる気は無いかな? 給料は弾むよ?」
「ふざけるなッ!」
憤怒の形相で楓が手の平から出現させた刀を再び振るう。 だが、やはりあえなく弾かれると、
「ヤダな、冗談だったんだけど本気にしたかい? でも、童子君の居ない栄王は確かに弱体化しているからね。 こういう誘いは乗っておくべきだよ。 それと、アンノウンもたいした事なかったね。 楓ちゃん、君は今貧血のようだ。 どうやら君は血中の鉄分を手の平で自在に構築できる能力と見たけど——…」
弾かれて飛んでいく刀に楓は懐から出した銃を向け、撃つ! 跳弾を利用し、クロアを狙う!
だがやはり楽しそうに頭に飛んで来たのを寸前の所で避けられる。
この男の能力は一体何なんだ?
ヘアピンでコンクリートの壁を砕いたり、直前で攻撃を避けたり……!
「それで当たってるかな? 銃を使ったってことはそろそろ鉄切れなんだろう」
楓の恐怖とあせりの混ざった表情がクラウンの目に入る。
恐らく、この男の言っている事は当たりだ。
それに反して、クロアと言う男はずっとニコニコと気持ちが悪いくらいに微笑んでいる。