ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.161 )
日時: 2010/12/17 21:17
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

「あ——…。クロア様、もう少し糖分をお控えになってはいかがでしょうか?」

明るい蛍光灯の下、コンビニで大量にチョコレートとクッキーと、ビスケットにかりんとう、綿飴にムース、ゼリーに……。 兎に角甘いものをクロアは手当たりしだい籠に目いっぱい詰め込んでいた。 それには店員も開いた口がふさがらず、ただただぼけーっとして見守る事しかできない。
そんな事をしている間にもクロアは新製品のレアチーズエクレアを三つ目の籠に詰め込んだところだ。 こわもて顔でサングラスの部下も、もう既に止めるのをあきらめて見守りに入っている。 

「これください」

満面の笑みで手当たり次第に甘いものを詰め込んだ籠をクロアはレジにドサッと置く。 その量は、籠五つ。 しかも目いっぱいまで詰め込んで全て山盛りと来た。

……。

一瞬の沈黙が流れる。 
恐る恐る店員は品物を手に取ると、レジを打ち出した。 相当物が入っているらしく、引きずり出すのに多少てこずる。
全ての会計が終了し、

「——15万6823円になります……。レジ袋はいかがなされますか?」

「ん? いーよ、要らないよ。 ほら、トランク持ってきてよ。 一番おーきい奴ね」

後ろのさっきまで止めに掛かっていた部下に命令し、コンビニからその荒らしは過ぎ去った。
コンビニから出るとすぐにクロアは黒いバンに乗り込み、レアチーズエクレアの包みをびりびりと開いて頬張ると、

「んじゃあ、次の目的地はアーレイン教会に5時間後に迎えに来てよ。 それで全部終わらせちゃうからさ」

そう言って、走っている車の中でその場に解けるようにして消えた。 

——そして。

「つまり私の——…」

バン!
と言う音と共にクロアの居たコンビニの前から数百キロ離れたアーレイン教会の扉が吹き飛び、蝶番が弾け飛んだ直後、

「やあ、君たち。 元気にしてたかな? ボクがクレイクロアのボスとして話を付けに来たよ、魔神ちゃーん!」

教会内で会議中の四人の不意を突き、楓がクロアに取り押さえられた。 実際、楓を助ける事は可能だ。 ここには魔神も居て、その部下も居て、足手まといになるだろうけどもクラウンが居る。

「何の用? 魔神ではなくどうせボクが目的だろう?」

となれば、相手の目的を見越してこっちから仕掛けるのが吉! 相手の行動力を一瞬ではあるがそぐ事は可能だ。
だが、動じることなくクロアはニコニコとした相も変らぬ恵美をクラウンに向け、

「あれ? バレちゃったか、もう少し上手く驚かせられると思ったんだけど……。ま、いっか。 驚かすネタはいくらでもある、楽しくお喋りしようじゃないか、僕は君たちに危害を加えな——…」

「そういうことは人質を放してから言うべきでしょう。 ま、無理やりにでも奪い取りますけどね」

クロアの後ろに人影が見える。 逆光で良く見えないが、一人は女、もう一人は男だ。 
後ろを向いたクロアに、男側の手がかざされる。

「ラッシュフラッシュ……!」

一瞬だった。クロアは目を押さえるとその場に倒れ、痛そうに苦痛の声を上げた。 だが、攻撃したのだろうその声の主はクロアには無関心で教会の中へ踏み入ってくる。 
敵ではないと言う確証などまったく無い、迂闊に近寄れば危険だ。

「おいおいおい、構えないでくれませんか? 一応はこっちも栄王の人間だし、楓とも顔見知りだ」

教会内に入ってきた所為で逆光の影響は消え、ジーパンのチンピラスタイルの男と、見慣れた顔がクラウンの目に映る。

「任務は完了した、これから先は自己判断で動けって。 童子さん言ってたから自己判断でここに救援に来たんだけど、意外だったわ。 楓ちゃんが戦意喪失してるなんてよっぽどよ?」

「まあそういわないで居てあげてくれ。 楓は前代未聞の最年少アンノウン隊員だ。 しかもまだ13歳と来た、戦意喪失くらい多めに見てやってくれよリザさん」