ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ ( No.178 )
- 日時: 2010/12/24 17:33
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
軍艦に戦闘機が突っ込んだのとほぼ同時にチンピラのような男がクロアに手をかざしたのがそれほどまでに効いたのか、クロアは一分間近く目を押さえて唸っていた。 だが、それとは反対に攻撃した男が怪しそうにクロアに視線を向ける。
その視線に気づいてか、クロアは目を押さえるのを止め、再び六人に固定された笑顔を向けた。
「あれ? ばれちゃったみたいだね、まあいいや。 僕を殺せるのはそこに座ってる魔神だけだから不意打ちされたってたいした脅威はないし」
クロアは両手をゆっくりと叩きながら、言葉を続ける。
「魔神も元は人間なんだし、ボクも人間だけど神になれる。 魔神の力は確かに脅威だ、今ここで人間が殺せない状態で殺してしまうのも悪くない……けど、まだ殺さない。 刻が来たらだ、まだその刻ではない。 魔神特有の技能を手に入れてからだ。 と言うわけで、その蘇生術お教えてくれないかな? 教えてくれれば直ぐに君ことを処分してボクは帰るんだけど……?」
…………有りえない事をさらっと言い放ち、クロアは平然とその魔神に近づいていく。 普通であれば、近づかないだろう。 もしかしたら魔神が殺せないと言っているだけで、実際は近づいただけで殺されるかも知れないのに……!
だが、近づいていくクロアとは反対に、
「幽霊の蘇生法しか私は知らないな。 私はこの世に残った記憶と形跡からの蘇生しか出来ない、つまり幽霊しか蘇生できないよ」
平然とクロアの言葉を否定する。 相手も相手なら、こちらもこちらで譲ることなくアリソンはにらみ、クロアは微笑み掛ける。
だが、その関係は一瞬にして崩れ去った。
不意にクロアがてを上に向けると、天井を紅い閃光と共に吹き飛ばした。 よほど細かく消し飛ばしたのだろう、破片一つ、塵一つ落ちてこない。
それを見て、アリソンは絶句し、クロアは「早く言った方がいいよ?」とでも言わんばかりに微笑んでいる。
「君……何処でその能力を……? それはクラウンの固有能力のはずだけど……?」
「——え?」
アリソンの言葉に最も驚いたのはほかならぬクラウンだった。 それもそうだ、レベルゼロはこんな問答無用に攻撃を仕掛けられる能力など有しては居ない。 全ては相手が能力者であって始めて発動し、さまざまな効力が発揮できる。
つまり、クラウンは
「ボクは……レベルゼロじゃなかったの?」
そういうことだ。 レベルゼロでなければ納得はいき、それでいて説明もつく。
だが、
「クラウンちゃん、それはちょっと違うな〜。 ボクの能力は君のものだけど、君の対となっている君のものだ。 もうそいつはボクが殺しちゃったから、——この能力はボクのものさ」
その言葉が脳内に木霊する。 だが、“対になっているクラウン”その言葉が何をし意味するのかは直ぐに分かった。
——湖の時のあいつだ。
「ねえ、クラウンちゃん。 君の能力は一体何なんだ? ボクは“∞/0”が使える、だがその対はいくら考えたって分からない。 だって、何も無いだろ?」
その言葉の直後、
「ここに居るクラウンの能力は0/0、今は何も使えないよ。 で、君はここに居る意味はあるの?」
アリソンが静かにその絶望的な事実を答えた。