ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.181 )
日時: 2010/12/20 20:15
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

アリソンの言葉を聴き、クロアは面食らったかのような表情を浮かべ、そこからまた元の表情へと戻った。 そして、

「いや、まったく無い。 むしろ今すぐ帰りたい位だよ」

クロアは残念そうに頭に手をやると、放し続ける。

「能力者の基礎とでも言うべきでありその文素晴らしい能力だと期待したけど……残念ながらボクからしたら期待はずれだな。 ——もう、死んでいいよクラウン。 君はもうずいぶんボクに色々なものをくれた」

クロアは言葉が終わると共に、クラウンに手の平を向ける。 ……屋根を消し飛ばした閃光を放つつもりだろう、ここは逃げるべきだ。
だが、何処へ逃げる……? 教会の屋根は無いがこの中で飛べる能力の奴などいない。 教会に入ってきた時クロアを悶えさせた男も空を飛ぶような能力ではないだろう。 明らかに戦闘向きだろうが、クロアに勝てる能力者などここには居ない。 悶えさせたと言ってもそのふりをさせただけだ、ダメージは恐らく皆無だったのだろう。 
とんれば、クラウンの反能力者化能力に頼るしかないが、今は何故怪能力者か能力は発動できていない。 最初にあの男がクロアに攻撃をした時、クラウンの性別は反転しなかった。

「残念かもしれないけど、——私がそれを許可しない……!」

その言葉の直後、クロアの手の平から放たれた紅い閃光は反れ、空への彼方へと飛んでいった。 それを見てリザは冷や汗をかきながら安どの表情を浮かべている。
そんなリザに対しクロアは不機嫌な子供のような表情を浮かべている。 まるで今しがた玩具を親に取り上げられたかのような感じだ。

「いや〜……意外と逸らす事は可能みたいね。 時間が無さ過ぎて360度曲げてあげようと思ってたのに90度しか曲げられなかったけど。 で、アリソンって言ったわね。 どうするの? 逃げるのは」

リザの言葉の終わる前に、アリソンは服のポケットから銀色の懐中時計を取り出すと螺子を巻いた。 すると、周囲の景色が回りだす——ッ!

ドサッ!

そんな着地音と共にアリソンとヴァムを除いた大体のメンバーは前のめりに突っ伏すように地面へと着地した。 ……いや、床へと着地だ。 しかも、揺れている?
不意に上を見ると、紅い帆が風を受けて靡いている。 どうやら帆船の上らしい。

「様こそ、私の船(城)へ。 ここなら私の許可した人間しか来れない。 ゆっくりと見物しよう、山吹紅葉が勝つか、元栄王のメンバーが勝つか。 残念ながら、ここからは手を出せないよ」

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.182 )
日時: 2011/02/04 17:12
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

クラウンたちは危機を脱した一方で、麻記那達は明らかに苦戦していた。 相手の山吹は、圧倒的な強さを誇っている。 だが、本質だけであれば麻記那と同じ疾患型能力者と言うだけだ。
だが、麻記那と違ってレベル型能力をも兼ね備えている。 長期戦は危険だ。 だが、麻記那の圧倒的名体力を見るとその状況も五部五部であり、短期決戦の技を持っていない。 強力な攻撃がないという問題があった。 兎に角マズイ。
ジェリーの再生能力は確かに麻記那も山吹をも圧倒的に超えた速さで行われ、そのために発生する肉体の強度はまだ麻記那の方が上。 
今戦力として投入しようものなら確実に大ダメージの何回かで再生能力を封じられ殺されてしまう……!

「あらあらあら! どうしたの鳳! もう息が——」

山吹の蹴りを直前で止めた麻記那の肩に山吹は手を乗せるとその腕力だけで軽々と体を持ち上げ、そして体を捻って空中で蹴り飛ばす!
麻記那の体はその蹴りであたかも風船を叩いたかのように軽々と吹き飛び操縦室の外壁へとめり込んだ。

「上がってるじゃないのッ!」

余裕で山吹は壁の奥深くにめり込んでいる麻記那へと近づく。 普通ならば死んでいるが、能力者はその程度で死ぬ方がむしろ珍しい。 レベルⅤであれば平均して単純計算でレベルⅠの22500倍の能力がある。  
今のは相当効いた、肋骨二本と左腕が折れたな……。 だが問題ない、5秒で治る。 それまで同じ箇所へのダメージを避けて治った所で油断してきた相手を蹴り飛ばす!
麻記那の蹴りも山吹の威力とは遜色なく、軽々と海の彼方へと吹き飛ばすが、そこで異変は起きた。
山吹の背から白い翼のようなものが出現し、海面付近を飛んでいる……!

「……なんでもアリね、何時のB級映画よ」

山吹はその翼で軍艦へと一気に迫る! 殆んどダメージを受けている形跡など見られず、息が上がっている以外の今の蹴りに収穫はなかった。 だが、息が上がっていると言う事は相当効いたと言う事だ。

「まあ、諦めないで頑張るか——ッと!」

一直線に麻記那へと飛んできた山吹を何か白い板が捕らえる。 その板は麻記那の背から六本生え、硬く、骨に似た質感だ。
そう、これはただ単純に肋骨で、変形させて板状にしただけだ。 だが、それがものすごいエネルギーを消費する。
まず、変形するだけで極度の疲労に襲われ、次に瀬を突き破る痛みは想像すれば耐え難いものだ。 そして最後に、

「やっと捕まえた。 私の骨、外に出すとどういうわけか凄く重くなるのよね。 早く倒さないと私の体力が尽きちゃうかも」

そう、維持する際の体力の消費は発言時の消費の比ではない。 麻記那の質量の大半が骨に集中するからだ。