ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ ( No.194 )
- 日時: 2010/12/25 14:30
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
「まあ、君のような国の機関に自らの意図を張り巡らす蜘蛛のような策士の足を全部もぎ取るのも悪くないと思う。 蛇のようなその狡猾な脳みそを収めた頭蓋骨を叩き割るのも良いだろう。 でもさ、一応従うべき所の方が強大なわけだし、大人しく従う方が良いと思ってたけど。 ……考えが変わったよ、私は君に協力し、君に仕える事を約束しよう」
水鏡の感情の無かった顔に初めて変化が起こる。 それも、楽しそうに冷笑している。 それに対し、クロアは相変わらず固定されたような笑顔で水鏡に微笑みかけている。
「うん、決まりだね。 じゃあまずはここを完全に堕とすよ。 で、その後これからどうするか考えよう。 ボクの作り上げる新しい世界の設計図を」
その言葉とともに、クロアは集会所の大きな金属の扉を開く。 もちろん、一般人が開くことはまず不可能なまでに重い。
扉を開いた直後、クロアは何かを思い出したかのように指をパチンと鳴らし、
「そうだ、これで三人目だね。 水鏡ちゃん、ボクの護衛になってよ」
その突然の言葉に水鏡は面食らったような表情を浮かべる。 そりゃそうだ、こんなあって間もない信用関係すら一切無い輩に『護衛になってくれ』と言う言葉は明らかに殺してくれと言っているようなもんだ。
だが、
「ボクが気に入らなければ殺して次の後ろ盾を得れば良い。 ボクは弱らない、弱体化しないからね。 君も多分満足できると思うよ、戦闘殺害教育院の水鏡ちゃん。 ボクも実はそこ出身なんだ。 最後の生徒千人を十人グループにして殺し合わせるあれ、君は何回やったの? ボクは、ボク以外の生徒が絶滅するまでやったよ。 最低3グループ潰さないと生きて入られないうえに二等兵だったけど、流石に二等兵はかっこ悪いからさ。 ボクはボクで百グループを最後まで全部消した」
この言葉が、水鏡に忠誠心を植えつける。 強者は絶対、しかも自分と同じことをやって自分より好成績を残しているものの言う事は命を閉じても守れと生まれた時から教育されている彼女にとっては今の神はクロアだ。
「ふーん。 私は君を殺す気も蹴落として自らが高みに上る気もサラサラ無い。 人間の腹の中を観察して、善人ぶっている奴らの腐った脳みそを頭蓋骨叩き割って曝け出せればそれでいい」
「……中々良いこと言うね、ボクと気が合いそうだ。 これ終わったらカラオケにでも行かない?」
「悪いが、私は遠慮しておく。 私は私で鍛錬があるものでね、太刀をもう少し上手く扱えないと君の言う新世界で生き延びるのは難しそうだ」
水鏡は腰に下げている身長とは余りに不釣合いな太刀を握り締めた。 歩くたびに、その太刀が地面に刃の足跡を刻む。
通路を進むと、石で出来ているのであろう無数の人形が通路を塞いだ。 継ぎ目をよく見ると石同士を黒い物体が繋いでいるのが伺える。
「……古式騎士N-100型か、能力の通じない機械兵とは——…。 元老院共はどうやらボク達を能力者では殺せないと判断したらしいね。 友達を殺し、感情を殺して敵を圧倒する。 ボクだったら絶対にそんな悲しい事はしない、ボク自らが出向いて敵を圧倒する。 それがボクの理想だ、君も手伝ってくれるよね?」
クロアがバトンを握り締め、水鏡に問う。 今までのニコニコと固定されていた笑顔で周囲を見渡していた時のクロアとは大きく違い、真剣な眼差しで水鏡を見つめる。
「私には貴方の考えはよく分からないけども、貴方は私だ。 私は命を削っても貴方を守りましょう」
その言葉と共に、水鏡は腰の太刀で機械兵の胴体を真っ二つに切り裂いた。 そして、水鏡が太刀を収めた事を確認すると二人はそこから更に奥へと静かに、一歩づつ歩みを進めた。