ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ ( No.230 )
- 日時: 2010/12/30 12:38
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
アルテミスが動くのを確認し、水鏡も動くかと思えば市内を構えたままその場から動く気配が無い。 ただ単純に、その場で有りもしない型の構えで、どの様に迎え撃つのかすらもサッパリ分からない。 なぜなら、その竹刀がむいている方向が、水鏡から見てアルテミスとは反対側なのだ。
「それでどうやって……迎え撃つ気——だッ!」
アルテミスは水鏡の直前まで迫ると上半身を大きく捻り、それの反動で必殺の一撃を叩き込む! 水鏡の竹刀はそれとは真反対、気づけても対応は出来ない……! はずだった。
そこで初めて水鏡は動き、そのサーベルを竹刀で受け止める!だが、流石は金属。 サーベルの威力が勝ったらしい、竹刀が裂ける。
「ちッ! 竹刀じゃ無理みたいね」
その言葉の直後、水鏡は腰に挿してあった太刀に手を伸ばす。 明らかに身長とは不釣合いで、太刀が大きい。 だが、水鏡はよろけることなく軽々とそれを扱っている。
「マジかよ、この譲ちゃん童子並に怪力だぞ……!」
半ば呆れ気味、半ば危機感を感じアルテミスは慎重に動き、間合いを詰める。 そして、相手の動きを観察し、隙を見つけて動く! はずなのだが、相手には隙しかない。
相変わらず切っ先をアルテミスとは反対側に向け、あの不思議な斬撃を繰り出すつもりなのだろう。 それを警戒せずにはいられない。 だが、ここで硬直状態を保っていればそれこそこちらが不利だ。 相手の人数は未知数、場合によってはジェームズも来ている。
「譲ちゃん、俺達をここから通さないつもりか?」
「黙れ、傍観者アルテミス。 貴様の噂はよく聞いているぞ? 仲間を見殺しにするとな!」
怒り心頭で、水鏡はアルテミスを睨み付ける。 身の毛もよだつおぞましい殺気が、アルテミスとネディの行動力を殺ぐ。 それに反し、相手は怒りに身を任せもはや力を限界まで出している。 明らかにこちらが不利なまま、更に不利になったとでも言うべきだろうか。
「逃げるぞ、ネディ。 この譲ちゃんヤベぇ」
「言われなくても逃げるわよ。 あんたを盾にこの場から離脱するつもりだったし」
「酷いなオイ!」
「お喋りとは……余裕ね」
アルテミスとネディの会話を割って水鏡の太刀が天井を崩し二人の間を分断する。 これで、一対一。
「私はさ、傍観者って奴が大嫌いなの。 だら、早く死んでよ……?」
「俺もずいぶん嫌われたもんだな。 まあ、仕方ないか」
アルテミスがサーベルを捨て、背の刀を抜く。 それを確認し、水鏡は満足そうに微笑むと、
「ハンデよ。 私は能力を使わずに戦ってあげる」
馬鹿でかい太刀を片手で持ち上げ、切っ先をアルテミスへと向けた。