ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.234 )
日時: 2011/01/01 14:19
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

第八支部へ向うクラウンたちとは対照的に、第八支部に既にいるアルテミスは明らかに苦戦をしていた。 相手は、高々剣術を多少扱える着物女でしかないのに、その圧倒的な力と疾さ、更には判断力。 能力が無くとも明らかにアルテミスより強い。

「マジかよ、ぞくぞくする……ぜッ……と!」

太刀をぎりぎりでかわし、刀を相手の目の前から突くと同時に体をそのまま後ろへそらせ、相手が刀に反応したと同時にしたから逆立ちしながら蹴り上げる! 
モロ顎にヒットした。 しばらくは動けないはず……!?
そんな計らいとは逆に、怯む気配など見せず水鏡の拳がアルテミスを吹き飛ばし瓦礫の山へと叩きつけた。 恐らく作戦決行時の打ち合わせでネディは別の二人組みと合流しに行っているはずだ。 そして、分断された場合は個々で判断し、動けと言われている。

「これじゃあ、能力を使うまでも無いね。 破玉だけで十分。 まあ、元々魔法を扱う相手と同等に戦うために作られた剣術だから生身の相手じゃ勝ち目は無いか」

壁にたたきつけられ気絶したアルテミスを水鏡は片手で持ち上げ、退かすとその瓦礫の山を太刀で細かく切り刻んで見せた。 明らかにアルテミス相手の時とは違い、能力を存分に発揮している。 恐らく、レベルⅤの中でも対等に渡り合えるのはユーリ位のものだろう。 ただ、水鏡が能力を使えばその様な輩は居なくなることは確実だ。
現在確認されているレベルⅤの中で、水鏡は群を抜いて圧倒的な戦闘能力を備えている。 恐らく同じレベルⅤが100人束になってやっと倒せるレベルだろう。
アルテミスをその場に放置し、水鏡は天井に大穴をあけるとそこへ飛び込んだ。

一方、襲撃を受けている元老院の間では。

「クレイクロアボス、九条 楔が我々グレースに牙をむいた事を認知した。 古式騎士N-01を起動し、直ちに我館へともぐりこんだネズミどもを始末せよ。 栄王の者ももぐりこんでいるらしい、奴らが徒党を組む前に確実に……な」

偉そうなひげの男が椅子に座りながらモニターへ話し込んでいる。 しすて、モニターに写されているのは真っ黒い物体が石でできているのであろう破片を規則正しく接着し、美しい模様を描いている箱のようなものだ。 そして、その下には

『古式騎士N-01を起動しますか?』

という表示が出ている。 その指は、迷わずEnterを押す。
そう、これが全てを無くす最悪の物質。 能力者の能力を消し去り、この世界の末路を地獄へと導く最悪の存在。
だが、無知な人間はそんな事など知るよしもない。 
ただただ、破滅へのスイッチがいま押された。 それだけだ。

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.235 )
日時: 2011/01/01 21:04
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

その2分後、クラウンたちのバイクへの衝撃波が、そして第八支部のペンタゴン構造のど真ん中に黒い大きな影が出現した。 その姿はどす黒い大きな靄だ。 楓を背負っているのもあって、クラウンは思うようには動けなかったが転倒だけは免れバイクを立て直す。

「藤井、先に行きましょう! クラウンは後から出いいからできるだけ早く来て。 目印が出来て助かったわ」

「目印つってもとんでもないモンが出てきやがったな。 鬼や蛇どころじゃねえ!」

それだけ言い残すと、二人は一気に加速して先へ進んだ。 その10分後。 第八支部へ到着した時には黒いこの大きな影さえなければ平和でのどかな朝の日差しがクラウンたちを照らしていた。 楓はクラウンがバイクから降りる時の衝撃で目を覚まし、瞬時に刀を造り構えるが、

「大丈夫だよ、今の君は疲れ切ってる。 何かあればボクがどうにかする。 大丈夫、ボクは今、何かを掴んだから」

そういって、楓と共に入り口へと向うと誰かが扉を封鎖している。 骸骨の面を被り黒いマントを羽織っているそいつは、二人の手下を従えていた。 片方は黒髪ショートヘアで、目は青色。服は紺色ブレザーをきている。 それとまるで対になるかのごとくもう一人は黒髪ショートヘアで、目は青色で片目に包帯を巻き、灰色のブレザーを着ている。
どうやら顔つきからして双子らしい。

「君がクラウンか。 俺は死神のイオ。 魔神の頼みで君の能力を平常どおり発動できるよう封印を解きに来た。 この話を信じる信じないは別としてだ。 リア、記憶を戻してやれ。 サエ、コイツの深層意識に眠っている邪魔な記憶を消せ。 そうすれば目も覚める」

その言葉に従うように、イオの横の二人はクラウンへと迫りよってくる。 今は敵か見方かなどサッパリ分からない。 神経が完全に磨り減っている所為で悪意があるのかどうかすらさっぱりだ……!
どうする、ここは逃げるか? 楓もある程度は回復している、二人掛かりで突破できるだろうか? しかし相手は死神とレベルⅤが二人、こちらが下手に動いても相手は仮にも神と能力はどうあれレベルⅤ、こちらが不利だ。

「何を戸惑っているの? 私は貴方の記憶のそこの楔を断ち切り、」

「私が貴方の断ち切られた楔の底にある記憶を拾い上げる」

「何も心配は要らない、貴方はこの世で重要な人物なのだから」

二人同時に、同じことを言い放つ。 信用して……大丈夫なのか……?