ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.236 )
日時: 2011/01/02 16:28
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

一方、外でクラウンが記憶を取り戻す10分前。 クロアがとうとう第八支部中心へと到達した。 もちろん、目当ては古式騎士N-0型だ。 中心は、五角形の円柱状で天井は異様に高く、外から見たい上に高い。 恐らく空間歪曲でもして内部構造を大きくしているのだろう。 そうでなければ外側で迷ったりなどしない。
そして、そこへ来たクロアの瞳に黒い大きな箱が映る。 
そう、古式騎士だ。

「へえ、これがその古式騎士か。 思ったよりコンパクトだね」

「ああ、N型はどうしても大きくなってしまってね。 我々の技術力では満足にコピーも作れない。 何か知っている風だな、クロア。 よければ話してはくれないか?」

クロアの入ってきた入り口とは別にその箱の後ろから椅子に座りながらモニターを眺めていたあの偉そうなひげの男が現れた。 だが、それをとくに気にかけた様子もなくクロアは箱へと近づいていく。
手を伸ばし、まるで飢えた状態で食べ物を取ろうと手を伸ばしているかのごとく本能的に……!

「そこまでしてこれを起動させたいか、良いだろう。 起動してやる、貴様を排除するためにな……!」

その言葉の直後、奴はクロアより早くその箱へ触れると特定箇所を叩いた。 それに反応し、箱が飛び跳ねる。

「忌々しい能力者どもよ、滅ぶが良い。 我ら人間が貴様らを絶滅させてやろう!」

「上等だ、高々機械。 人間に扱える程度の物体が能力者にかなうと思うなよ。 ボクは、能力者としてそれを操り人間を滅ぼす!」

クロアの手の平で黒い雷電がチリチリと音を立てて迸る! それに対し、古式騎士は黒い靄のように周囲に広がった。 それに触れた雷撃が消滅していく…… !? 
まさか……!

「気づいたようだな人外の化け物よ。 そう、コイツハ魔力を周囲から取り込み活動する! 貴様の電撃など丁度よい燃料でしかないわ!」

「……上等!」

クロアの固定された笑顔が解除され、その口元が不敵にも笑っている。 それが原因か、

「古式騎士よ、まずは奴を殺せ!」

その言葉に反応したのだろう、靄の一部が集結し、平均的身長の人型へと姿を変える! 
クロアは相変わらず不敵な笑みを浮かべ、その場に立ち竦んでいる。 戦意を喪失したわけではない、むしろ、

「ヤバイナ、ゾクゾクジテキタヨ。 ボクハ根ッカラノ化物ミタイダナ」

楽しんでいる節がある。 そして、迫り来るその人型の靄の攻撃を易々と掻い潜り、

「マズハキミダ、ボクノ、ボクタチ能力者ノ敵ヲ殺スベキダロウネ」

クロアの拳が偉そうなひげ男の胸へとめり込む。 もちろん、引き抜かれたその手にはまだ鼓動を刻む心臓が握られていた。

「ボクハサ、君達ノ言ウ化物ラシク人ヲゴミノヨウニ扱ッテキタケド、ヤッパリ人間デ居タイト思ウンダヨネ。 デモ、世間ハソンナ特異ナボクタチヲ人間トハ認メナイ。 ダカラボクハ人間ヲ止メタ。 元ハレベルゼロ、今ハタダノ化物サ。 化物同士、ドチラガ強イカ比ベテミヨウカ? ……ナンテナ。 ボクハ人間ニ戻ルタメニココマデキタンダ、ココデ能力者トイウ概念ヲ全テ消シ去ッテヤルヨ。 世界ノ人間全テヲ、古式騎士ノ力デ能力者ニ変エテ……!」

そのまだ動く心臓を、クロアは動き出した古式騎士へと投げつけた。 だが、古式騎士は霧散して攻撃を避ける……!

「サテ、コノ化物ヲドウヤッテ手懐ケルカナ……?」

クロアの皮膚が一気に剥がれ、どす黒い内部を剥き出しにする……! その姿は古式騎士と瓜二つだ。
そこへ、

「あらら、ずいぶんタイミングよく来ちまったみたいだな。 この黒い奴二人は敵か? それとも見方か?」

「さあ? 私には今何が起こっているのか理解しかねますが……」

クロアの入ってきた入り口からユーリと空が化物の独壇場へと迷い込んだ。 相変わらず辺りを目障りな黒い靄が覆う。

「ホウ、面白イオ客サンダ」