ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.255 )
日時: 2011/01/07 20:54
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

「木? まさかそんなことするわけないだろ、僕はコイツを……」

空中のクロアに追い討ちを掛けに来たのか古式騎士が迫る! それをクロアは面倒くさそうに黒い雷電で地面へとたたきつけた。 反応速度は恐らくクラウン以上だ。

「閉じ込めるんだったら棺桶だろう! 黒薙童子はもう死んだんだからさ!」

砂にたたきつけられ、ゆっくりと起き上がる古式騎士にクロアの雷電が見事にヒットし周囲を真っ黒い金属質の板が飛び回り再び古式騎士を地面に寝かせるとそこに飛び回っていた黒い金属板が全て終結し一つの棺おけへと姿を変えた。
その棺桶を目にした直後、クラウンは恐ろしい物でも見たかのように頭を抱え、怯えた様にその場で蹲ってしまった。 
その好きに、その棺桶を吹き飛ばし古式騎士は起き上がった。 戦意を喪失したクラウンに古式騎士が迫る。


……何時からだっただろう、棺桶が急に怖くなったのは。 死者が入っているから怖いのではない、自分が入れられてしまうのが怖いのだ。
今見ても、それは恐怖の対象だ。
私の、私の戻ったはずの記憶をさらに私は掘り起こす。 その記憶はまるで地面に掘った穴をコンクリートで固めたように中々出てこない。
恐らくまだ戻っていない何かがある。 何か、忌まわしい過去が……!
記憶を戻した際に戦闘に支障が出ないよう取り計らったつもりだろうがあの死神! 今こんな所でうずくまっていては駄目だ。
だが、そんな自分の意思とは逆に脳は溜め込まれた忌まわしい記憶を次々と吐き出していく。

「ヤダよ、止めてよ。 止めてよ、止めて、私が……ボクが……何をしたの? 悪い事をしたのなら謝るから、謝るから……。 ごめんなさい、ごめんなさい……!」

次々と溢れ出す忌まわしい記憶に無意識に口が動き、言葉を吐き出す。 ……そうだ、初めて人を殺した、人間を殺した記憶だ。
 確か孤児院で棺桶へ入れられて埋められた……! あのときの記憶……!
忌々しい人の皮を被った非道な生き物達の実験場……、能力者にも関わらず能力を中々発動しない、発動できない私の能力を引き出そうと言う目的で行われた実験。
自らの脳髄の好奇心を満たすためのあの実験! 白衣を着た大人たちの非道な行動の数々!
思い出しただけで忌まわしい、こんな物。 ……“無くしてしまおう”、人間を……!

「そうだ、そうだよ、そうなんだ。 私が正しいんだ。 自分達は常識人で正しいなんてアイツが、奴らが言うから全部! 正しいんだったら神様が奴らを守ると思って、包丁で切り殺したんだ。 チカラを使って消したんだ。 そうだ、圧倒的なチカラさえあれば何をやってもいいんだ。 奴らがそうだった、圧倒的だった。 そうだよね、力さえあれば何をやってもいい! そうだよね。 私は……私は間違っていない!」

頭を抱えうずくまっていたクラウンに迫り来る古式騎士をクロアは辛うじて押しとめていた。 今クラウンがいなくなると古式騎士を確実に壊せなくなる。 そんなクロアの思考がクラウンをまだ行き永らえさせていた。
だが、そのクロアを終に蹴散らし古式騎士はクラウンへと迫り、後1mと迫った直後だった、


「私は間違っていない、私が……私が正しいんだッ!」

クラウンの頭を抱えていたその手の平が、古式騎士へと押し付けられる。 ……そして、あの白い雷電が、今までに無く巨大な雷となって古式騎士をまるでその空間に霧散させたかのように消し飛ばした。 立ち上がったクラウンの瞳は、どんな化物も裸足で逃げ出すような身の毛もよだつなおぞましい殺気を放ちながらクロアを睨む。

「……クラウン、どうやら君、孤児院時代の事を思い出したらしいね。 その取り乱し方は尋常じゃないよ、どこかの村の錯乱する何とか症候群みたいだ。 ま、あれは治療薬がある分良いか、ボクは治療薬なしで君を元に戻さなければいけない様だし、このまま放置すればボクの計画に支障が出る。 放置するわけにも……いかないな」

クロアの言葉と共に、クラウンがクロアへと襲い掛かりクロアは迫り来るクラウンを前に手の平に黒い炎を灯した。 雷電とは違い、エネルギーの密度は炎の方が高い。 短期決戦方の武器だ。

「さあ、一瞬で終わらせるよ」