ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.266 )
日時: 2011/01/21 21:34
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

国家第八支部が襲撃を受けてから早数時間、事は既に終局を迎えていた。 クロアが、九条 楔が、国家能力兵をいとも容易く皆殺しにして見せたのだ。 その所要時間、驚くことに最新精鋭クラスの装備の能力者約2500人を相手にわずか5分。 最新鋭の戦車を引っ張ってきてもこうは行くまい。

「さて、カイト君。 ボクからいくつか話がある」

無数の辺りを埋め尽くす黒焦げの屍を踏みつけながら、死神のような雰囲気を漂わせながら、クロアはゆっくりとカイトへと歩み寄る。
殺気も何も、敵意すら感じないが、その眼光は背筋の凍りつくような殺人鬼の瞳そのものだった。 思わずカイトは身構え、

「何だ?」

「いやさ、クレイクロアボスとしてボクが正式に栄王旅団と友好条約を結びたくてね。 君達にも都合の悪い話じゃない、どうだい?」

その意外な言葉にカイトは一瞬困惑するが、直ぐに順応し、

「へえ、どんな条約? 日米通称通行条約みたいなのは断るけど?」

「ヤダナ、そんなにチクチクしないでよ。 ネディちゃんも閃光弾撃とうとしないで、楓ちゃんもリベンジは後で受け付けるし、レイン君……君は何かな? ボクを殺すつもり? 無理だから諦めなって。 で、本題に戻ろうか」

カイトの後ろに着々と迎撃を終え、集いつつある栄王のメンバーに向かって、

「クレイクロアと、栄王の条約の内容は……。 どうしよ、何て説明すればいいのかな?」

「……戻ってきてみれば一体何事だ? コイツ、クレイクロアのボスじゃねえの?」

今しがた戻ってきたアルテミスが刀に手を掛けるが、水鏡がそれを制している。 どうやら、能力を持っていた分水鏡の方がわずかに強かったらしい。 両者共に刀傷だらけだ。

「ああ、ボクボスだよ。 で、内容は簡単に、両者共に争ってはいけない、殺しあってはいけない。 ……干渉してはいけない。 で、如何だろう? もう、ボク達は全員国家に楯突いた重罪人だ。 だったらさ、それに犠牲を払った国家を失脚させてしまえば、問題ないだろう。 既に国家最重要機密である実験体のボクとクラウンが表立って世間に存在を認識されている。 だったらもう、僕達の勝利だ。 実験施設の全てを公開すれば良い、それで国家の信用は無に帰すと思うし——……」

そのクロアの言葉の途中、空に一閃の雲と、轟音が轟き、何かが落ちてくる。 それの正体は、

「核爆弾だ!」

小型かつ強力な核爆弾。 しかも、この時代の科学力では直径30cmのバ核一個で都市ひとつを軽く消し飛ばせる。 しかも、対能力者仕様でレベル型能力は殆んど効果が無い!
……死ぬ……。

「気にしないで、落ちてくるまでに3分は掛かる。それに、彼が来たみたいだね。 様こそ人間界へ、死神君」

クロアの言葉と共に、カイトの後ろから髑髏の仮面を被った男が、二人の従者を連れてクロアの前へ出る。

「ああ、人間界へはあの魔神の頼みじゃないと私は来ないな。 事が全て終わった、あとはシェリーが全てを人民に話すだろう。 その前に、私が全てを説明するに当たって君達全員の安全を確保するのが優先のようだな」

死神と呼ばれたその男は、天を突く様に、落ちてくる核爆弾に手を重ねる。