ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.270 )
日時: 2011/02/04 17:03
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

————数日後————

いつもの如く、暗殺家業を終えたシェリーがアパートへの階段を一人寂しく上がっている。 ついこの間まで、その暗殺を受けていたのはクラウンだった。
もちろん、クラウンはドジを踏んで相手を殺し損ねると言う事はまず無かった。 時々、数えられる程度しか任務を失敗した経歴は無い。 それも、基本的に相手はレベルⅤ。 そのレベルの技能があれば、国家能力者兵の重役を任されるレベルだった。
だが、クラウンは、国家に反逆し、クロアと共に滅ぼす直前まで相手を追い込んだのだ。
今、警察は必死になってその二人を追っている。 だが、二人とも見つかる事などないだろう。 その理由に説得力は殆んど無いが、シェリーには警察程度では見つけられないと確信できる自信があった。

「私が見つけられないんだもの、警察なんて法に沿った捜査じゃ見つかるわけ無いよ」

自分に見つけられないのだ、法を守り、捜査する警察ごときにあの二人の行方が掴めるとは一切思っていなかった。 それに、いる所を見つけられたなら、如何にして探し当てたかを聞いて見たいものだ。
そして、三階事務所のドアノブに、手をかけて捻る。

————黒い人影にクラウンが連れ攫われ数日後————

クラウンは、快適とはいえない独特のテンポで揺れるベッドの上で目を覚ました。 もちろん、揺れが無ければ目覚めも良かったのだろうし、こんな風に船酔いもしていなかったはずだ。 
恐らくここは、あの魔神の海賊船の中だろう。 なんだか、そんな匂いがする。 
周囲を見渡すと、そこは壁一面にガラス棚が並べられ、中ではビンに入った色とりどりの怪しげな薬品が波の揺れにあわせて揺らいでいた。 そんな中、部屋の一角に火のついた葉巻タバコを咥えている白衣を身にまとった骨格標本が目に入った。 なんだか自分でも良く分からないが、ひきつけられるように、周囲の不思議な薬品には目もくれず、骨格標本の目の前へと歩み寄った。 
眼球は無いが、なんだかこちらが見られているような気分にさせるその骨格は、クラウンの手が鼻先に迫った所で、

「オイオイ、オレァ見せモンじゃねえぞ。 お譲ちゃん」

クラウンの腕を押さえ、自分から遠ざける。 もちろん、この予想外の出来事に、一瞬隙を見せるが直ぐに順応し、その動く骨格標本の両腕を握り、いとも易々と間接を捻り曲げ、外して見せた。 だが、驚くそぶりを見せる様子も無く、その骨は腕を鞭のようにしならせると、“カキンッ”と言う音と共に腕の関節をはめ直し、

「駄目だろ、会って間もない男の腕の関節外すのは……。 とんだアバズレだな君は。 まあいい、まだ寝ていた方がいいがまあ……能力者だったら平気か。 この船の魔力濃度は半端じゃないし、意識が戻った以上問題ないな。 ここで待ってろ、船長を呼んでくる」

とだけ言い残すと、骨格標本はその部屋を後にした。