ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 能力者Lvゼロ      ( No.274 )
日時: 2011/02/04 23:39
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

数分の後、その部屋のドアが開き見覚えのある長い金髪の女が赤いコートに身を包み、明らかに船長とは思えないホワンとした雰囲気と共に骨格標本と部屋へと入ってきた。 
なんだか、別の意味で凄い事に巻き込まれたような気がする……。

「クラウン、目が覚めたんだね。 良かったよかった。 魔王と閻魔大王にまで手を回してもらった甲斐があったよ、命が既にズタズタだったし、これで魂と精神がイカレてたら人格が変わってたかもね」

やっぱり、この女、船長って雰囲気ではない。 それどころか、魔王や閻魔大王の知り合いって感じじゃない! 何か違う! 
なんていうかさ、もっとこう……なんか支配者としての威厳は無いの !? 魔神だったよね?

「そりゃどうも。 殺してくれた方がよっぽど良かったかもしれなかったけど、私はどうしてココに居る? 確か砂漠のド真ん中で倒れたと思ったけど……」

「いやさ、それがね。 私が式神つかって迎えに行ったんだよ。 このままだったら今頃君は裁くの真ん中で干からびてピューマの餌にでもなってたかもしれないし、下手をすれば魂があの世に飛んでいって探せなくなってたかも——」

「女は話が長いな。 ま、……この女に限ってか。 クラウンと言うのはコイツか? アリソン」

突如音も無くアリソンの後ろから現れたこの男は、多少目つきが悪く、目の下に三つの赤い斑点があり、その全てが血痕の様にも見える。 だが、そんな事今はお構い無しだ。

「長いって? 良いじゃん、お客さんなんて久しぶりだし、支配者じゃないお客さんなんて今までで数えるほどしか居ないよ? ジャックに、黒鳶 流に秋風 翔に黒薙 童子、それとクラウン。 お客さんとしてきたのはこの数千年でたったの五人。 私がはしゃぐのも理解してよ」

「いや、ワシには理解できかねる。 多すぎれば意見は纏まらんし、少なくては良い意見は出ん。 故に、大体三人居れば良いんだが……」

クラウンを無視し、二人は話を始めた。 だが、直ぐにクラウンのことを思い出したらしい、アリソンがクラウンの腕をむんずと掴むとそのまま散々複雑迷路のようなな船の中を連れまわし、一つの大きな、ずっしりとした木製の扉の前で立ち止まり、持ち手にダイアルのついた鍵を鍵穴に差し込むとガチャリと回し、ドアノブを回した。
扉が開くと共に、明るい外の日差しが差し込んでくる。

「あれ? 人間の海軍は? ついさっきまで居たと思ったけど……」

「俺が黙らせた。 一睨みで勝手に震え上がって撤退した」

そこは、甲板へと繋がっていたらしく、海面に太陽光が反射し、とてもまぶしい。 そんな中、甲板のど真ん中に会議用机と椅子が5席置かれていた。
その中の1席に、黒い長髪に水牛のように曲がった角が特徴的な男が机に足を乗せ、行儀悪く座っていた。 ……踏ん反りが選っていたと言うべきだろうか?

「サァータァーンン〜! 貴様はワシが無罪放免にして魔界をくれてやったと言うのにこんな所で何しとる! はよ魔界へ帰らんかい!」

「黙れ閻魔大王、無罪放免にしたと言えば聞こえはいいが、全ては貴様の実力不足であろう。 俺を超える能力を持って無罪放免にしたと言うべきだな、生かされているのは貴様の方だ」

「ハイハイ、黙ろうか二人とも。 重要会議始めるよ」

どういうことだろう。 今分かるだけで三人の人物がその席についている。 魔神のアリソンに、魔王のサタン、そして想像よりも若々しく、見た目10代後半くらいの閻魔大王。 恐らく、今甲板に居るメンバーの中で、私が一番若いのか……。 

「で、会議って何をするの? アビリティウォーズは阻止できなかったし——」

「何馬鹿を言っておる、クラウン。 貴様の働きと、後のこやつの働きで沈静化に成功した。 まあ、ワシの管轄世界ではない故に、如何でも良いのだが……。 今回ばかりは規模が大きかったようじゃのう」

閻魔大王の言葉と共に、マストの影からクロアが顔をのぞかせた。 どうやら眠っているらしく、気持ちよさそうに寝息を立てている。

「貴様は大して働いて居るまい、収集に当たったのは俺とサエとリアだ。 貴様の仕事は報告書の改ざんに過ぎん」

「じゃが、その報告書の改ざんが出来るのはワシ一人だと言う事を忘れては居らんのか、堕天使ルシファーよ」

「その名で呼ぶな、忌々しい」

クラウンの何てことのない発言が、魔王と閻魔大王の喧嘩のきっかけになってしまったらしい。 どれだけ仲が悪いんだこの二人は……。

「はいはい静粛に〜」

バンバンと木槌で机を叩きながらアリソンが二人の仲介に入るが、その言い争いが収まる気配は無い。 むしろ、木槌の音に対抗して二人とも声が大きくなっているような……。

「大体貴様はワシが居らんければ今頃天照の書斎の奥で眠っておったかもしれんのじゃ、わしの言う事をきけ」

「その様な事は御免被る。 俺を創った創ったと恩着せがましい。 大体、俺の存在を知らせたのは貴様かもしれないが、俺を作ったのは天照の気まぐれだ。 フラスコ生活は辛かったぞ愚か者目が。 貴様もあの狭いフラスコの中で生活してみるか? 無理だろうがな!」

「黙れ愚か者! 年上に対して何たる態度——」

「それを言えばアリソンに対してずいぶん馴れ馴れしいではないか! 彼女と貴様の年の差は数万歳は離れている! 貴様が名前で呼ぶのもおこがまし……い……?」

「だ れ が、数万歳だ馬鹿ァッ! ……死にたいらしいな、その希望に沿って処刑してやる。 選べ!」

アリソンは腰の剣を抜くと、二人の顔面ギリギリに切っ先を突きつけ、

「閻魔大王、焦熱地獄がいいか? さぞかし見ものだな、罪を裁く閻魔大王が、自らを同じ手法で処刑されると言うのは! 魔王、黒焔で焼かれたいか? やはりこれも見ものだな、本来ならば魔王が勇者に対して行う物だ。 全身の皮膚と言う皮膚を魔力もろとも焼き払われる。 どうだ……? 二人とも」

アリソンの殺気が辺りを包む。 どうやら、ここでも疲れそうだ。