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Re: 能力者Lvゼロ= “無能力者”      ( No.59 )
日時: 2010/11/17 14:03
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

ワゴン車が高速道路に乗ると、周囲の景色が一変した。
あの時のタクシーのように、高速道路の入り口をくぐったとたん周囲が闇に包まれたのだ。
恐らく、誰かがこのワゴン車を確認してアジトへと繋がるワームホールを開いたのか、このワゴン車がキーとなりワームホールが開いたのかはサッパリ分からなかった。
取り合えず、この間に現状整理と情報を仕入れるべきだろう。


「アルテミスさん、貴方は能力者ではないのに何故レジスタンスに協力を…?」

“能力者ではない”この言葉がアルテミスを驚かせる。
驚いた表情を隠せぬまま、


「何で分かった? 一度も凡人と言った覚えは無いが……?」

「ボクと刃を交えた時、能力者であればボクが男へと変化するから。変化しなかったという事は——」

「能力者ではないわけか。能力者レベルはその能力者が能力を使わないと分からないからな、驚いた。そんな見分け方をしてるのか」

「まあね。それ位やらないと、相手に殺される世界で生きてきたから」

アルテミスの反応を楽しむかのようにクラウンはニッと笑うと、コートのポケットから板チョコレートを取り出して一口ほおばる。
そして、周囲を見渡すと乗っている人数を数え、凄い事に人数分の板チョコレートを取り出すと、板チョコレートを全員に勧めたが、アルテミスとリザには断られた。
理由は、

「運転してる私にそんな物勧めないでよ、空気読んで」

というのと、

「俺は勘弁、甘い物はあんまり好きじゃないんだ」

という二通り。
十人十色って奴だろうが、クラウンは気にせず残りをポケットにしまった。
そのとたん、まるで見計らったかのように真っ暗なワームホールを抜けると、大きなビルの前へ出た。
ワゴン車は慣れた手つきで地下の駐車場に止まると、そこへ迎えが来た。

「遅かったな、問題でもあったのか?」

大きな青いマフラーの男がワイン色の赤み掛かった瞳をリザへと向ける。

「いいえ、問題は何も。驚いたわ、レベルゼロ能力者が同じワゴンに四人よ?」

「フン、そんな事知らないな。俺の仕事は恩人のヴァム様の命令をこなす事だけだ、待てといわれればいつまででも待つぞ?」

その言葉を聞いたリザは軽く苦笑いすると、

「そういう言葉は彼女がデートで遅刻した時にでも使いなさい、私に言っても意味無いわよ」

呆れながらエレベーターへと全員を先導する。
その指は、F58階を迷い無く選んだ。