ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ= “無能力者” ( No.62 )
- 日時: 2010/11/17 14:05
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
- 参照: 栄王=えいおう
エレベーターが停止すると扉が開く。そんな当たり前のことに対してもクラウンは警戒していた。
何故なら、向うはこちらの情報を持ち、こちらは向うの情報など殆ど無いに等しい。警戒して、確実に信用できる事を確認できるまで気を抜くことなどできない。
そんなクラウンに、
「大丈夫、こっちもレジスタンスのことを調べておいているから。心配ないよ、敵にはならない」
シェリーが小声で耳打ちするのを楽しそうにアルテミスが眺めている。
さすが傍観者だけあって地獄耳なのか、周囲には聞こえていないようだが、アルテミスはあたかも「聞いていましたよ」と言うような視線をシェリーに向ける。
不意にそれに気が付いたのか、シェリーは不満そうな顔でアルテミスの方を向く。
リザが先導しているこの集団は、ちょうどそのタイミングで一つの会議室であろう部屋の前で止まった。
ポケットを探ってリザが鍵を取り出す間に、部屋の扉が独りでに開く。
内側から誰かが扉を開いたのだろう。その扉を開いた女も、また変わった格好だ。
魔法使いの帽子とでも言うのだろうか、それが今いえる最も正しい表現だろう物を被り、童顔で黒いボタンの服……。彼女は魔女と言って差し支えない姿をしていた。
不意にアルテミスが嫌そうな表情をしたのを彼女は見逃さなかった。
リザ達に扉を跨がせると、彼女はアルテミスだけを入れないように体でブロックし、胸倉を掴んで問い詰める。
「何で私に会うたびに嫌そうな表情をするのよ !?」
「いや……スマン。ネディ、そんな気は……!」
アルテミスが謝った直後だった、ネディの手の平がかすかに光る。 ……まさかこれは……。
「死んじゃえ!」
その手の放つ光は、次第に強くなりアルテミスへと発射された。 空かさずアルテミスも腰の刀を握ると居合いでその光を一太刀。
二つに分かれたその光は床へとそれてアルテミスの真横を掠め、床に大きな焦げた穴を開けた。
能力者の能力は一歩間違えただけで、簡単に人を殺せてしまうのだ。
一方、部屋へと通されたクラウンとシェリーは椅子に座らせられ、リザはこの後の任務で同部隊の能力者たちと打ち合わせに行ってしまった。
レインはレインでジェリーを椅子に座らせて、能力を駆使して精神病を一気に治していた。ジェリーの顔色が一気に良くなっていく。
それを見たクラウンが、再び女から男へと変異した。それを見たレインは驚いたような表情を浮かべ、セシルは楽しそうにクラウンの事を観察しだした。
そんな中、不意に部屋の扉が開く。
入ってきたのは、黒髪に金色の瞳、見るからに人を殺していませんか? とでも言うような無数の切り傷が腕に付いた二十代の男。
……誰だ?
開いている席にそいつは座ると、周囲を見渡してレインとセシルにも座るように命じた。 どうやら、二人の上司なのだろう。
全員が座ったのを確認すると、
「どうやら、今回の任務はクレイクロアに先を越されなかったらしいな。 全員無事で何よりだ、……リザは……次の任務か。 たまには休むように言わないとなぁ……アイツ働きすぎで体壊しちまう。 さて、改めて自己紹介だ。俺は黒薙童子。 この栄王旅団の最高責任者だ」
驚くべき事実を口にした。 如何見ても二十代前半で、新入りの信用できない輩の前に平然と無防備に姿をさらしているのだ。
……肝が有りえないくらい据わっているのか、馬鹿なのか……。