ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者Lvゼロ= “無能力者” ( No.82 )
- 日時: 2010/11/23 10:49
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)
凄まじい風が、クラウンたちの向う村の上空で渦巻いていた。 小さな竜巻とでも言うその風の渦は、鳥が飛ぶことすら許さぬかの如くただそこに居座っている。
ヘリの運転手が、嫌そうな顔をする。 そりゃそうだ、この風の中進むのは自殺行為とでも言うべきだろう。
すぐさま咽んで童子へとつなぐと、
「黒薙様! 村上空のつむじ風に遮られ、村へと降りる事ができません!」
周囲のうるさい風邪の音に負けるものかと大声で叫ぶ。 実際は、クラウン達にその声は聞こえておらず、イヤホンからする微かな声だけで連絡を取り合っていた。
しばらくの空白時間の後に、
『確か、時計塔が村の中心にあっただろう。それを良く見て、渦に逆らわず螺旋状に降りてみろ。大丈夫だ、あんたなら出来る』
童子の助言が運転手の能力を発動させる。
”レベルⅢ能力者“
クラウンの瞳にその情報が流れ込む。 しばらくヘリを上空待機させ、運転手は周囲を見回すとポケットから銃弾を数発取り出すと、中の火薬を周囲に撒いて風向きを確認する。
その直後、運転手の表情が固まり、ヘリが有りえないような動きをしながら風に流され村の中心広場へと降り立った。 降りる途中、逆さになったり地面と平行になってとんだ所為か、シェリーはどうやら酔ったらしい。
酷く吐きそうな顔をしている。 だが、意地でも吐かない。
つむじ風の真下にある村に入ると、今度は風の音ではなくレンガやコンクリートが砕ける音と、爆発音が辺りを騒がせていた。
そう、鳳が村の中心広場で見境なく暴れていたのだ。
しかも、その暴れ方は膨大な力を周囲に叩き付けるだけの乱心とでも言うべきものであり、手に触れたものを投げ飛ばし、殴り壊し、はたまた握って完全に壊れるまで何かに叩きつけたりまでしていた。
感情などまるでなく、ただ本能とでも言うべき破壊衝動に身を委ねた彼女はただ醜かった。
不意に、クラウンたちに気が付いたのだろう。 明らかにこちらへ向って家の鉄骨であろう棒状の金属を槍の如くブン投げる! が、間一髪だ。
先ほどの運転手の能力のおかげで、現在のクラウンの能力は、軌道感知の真逆。
「軌道喪失……!」
鉄骨は、まっすぐに飛ぶはずが見事に地面に突き刺さる。 だが、驚くのはクラウンの能力ではない。 太い鉄骨を地面に深々と突き刺した彼女の腕力だ。
クラウンは楽しそうに苦笑いすると、そこへ飛んできたロケットランチャーの軌道を混乱させ、地面に激突させるとその爆風で鳳を吹き飛ばした。
すぐさま、運転手の無線をひったくると童子につなぐ。
「どうした?」
「どうしたじゃない、鳳って奴だと思うけど、襲ってきたぞッ!」
クラウンの怒鳴り声が、周囲に響く。 怒鳴り声もだが、今のクラウンの表情も真剣そのものだった。
しばらく間をおいて童子が、
「頭に軽い電気ショックを与えれば気絶して再起動する際に元に戻る、スタンガンがヘリのなか——…」
そこで通信機を地面に投げつけるとクラウンはいいでヘリへと戻り、スタンガンを物の数秒で探し当てた。
これで頭を……!
しかし、ヘリから出てきた直後だった。細長い針金のようなものが、スタンガンを貫きクラウンを軽く感電させた。
少し意識が遠ざかったような気がする。
だが、その場に踏みとどまると鳳に威力をマックスにして投げつける!
が、遭えなく受け止められ、軽々と握り潰された。
その直後、鳳がまるで電撃を受けたかのように小刻みに震えると、地面へ突っ伏した。 仰向けにすると、額に小さな火傷の跡がある。
「クラウン、駄目でしょ。攻撃が直線的すぎ」
クラウンの後ろからシェリーの声がする。
片手を鳳に向け、もう片方の手で電撃の延びたような矢が形成されている。 どうやら、これをあてたらしい。