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Re: 能力者Lvゼロ= “無能力者”      ( No.97 )
日時: 2010/11/30 21:55
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xiz6dVQF)

周囲に存在した物体を粗方炭に変えると、童子が火柱に背を向け、ヘリの方へ一歩踏み出した。 直後、童子にそっぽを向かれた火柱は存在を誇示するかのように、よりいっそう激しく、大きく燃え上がる。 

……意思がある?

それを見て、童子はヘリに“飛べ”と合図を送る。 だが、今飛んでしまえば童子はここに置き去りだ。 いかにして童子を……?
そんな事をクラウンが考えた矢先だった、ヘリが浮き上がり、村上空のつむじ風を突っ切って大空へと向かいプロペラを回す。 
もう、童子はこのヘリには乗れない。 後で救援を呼ぶ気か?
だが、クラウンの横の席で、

「まさか、救援なんて呼ばないだろう。 現に俺はこうして生きていて、このヘリにも乗ってる」

種も仕掛けもありませんといわんばかりに両手を広げた童子がクラウンに向いて座っていた。 
どうやって乗り込んだ……?

「不思議そうな顔だな、俺も不思議なんだが、お前いつから女に変わった? 身代わりか?」

童子の不思議そうな瞳がクラウンに向けられる。 だが、クラウンは、女化のことなどまったく気にも留めていなかったし、女の能力者があの村に居たのだろうと言う程度にしか気にしていなかった。
だが、一応は報告の義務はある。

「ボクが戦闘中に突然こうなった。 いつもなら誰の所為でこうなったとか分かるんだけど、まったくそれも分からなかった。 でも、前にもあったことだから平気だよ」

「それが問題だな、あの村に居た能力者。どういう能力なのか把握していないだろう? 能力者の能力は不思議な事に決して被らない。故にその能力が何処にあるかを知っておく事こそが戦略の鍵だ。 ちなみに俺は能力者ではない。 魔力の力を得た人間であり、実質魔人だ。 一応、低級な魔術は扱える。瞬間移動や……」

童子の話が途中で切れた。 
つい数秒前まで平然とクラウンと話していたのが嘘のように息切れと、凄まじいまでの疲労が顔に出ていた。 恐らく、眩暈なども酷いのだろう。
しかし、どうやったらここまで疲れるのか、普通なら気を失ってもいいだろうという所に立っているにもかかわらず意識を
保っていられる童子の精神力はやはり凄いものだ。

「悪いな、話はビル戻ってからだ。 俺は……少し寝る」

そういうと、童子はヘリの席を二席占領して死んだように眠り始めた。 心臓は鼓動を刻んでいるらしく血管がわずかに動くのが確認できる。 しかし寝息の音すらしない、本当に生きてるのか?


「死んでない……よね?」