ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Gray Wolf 第2章 更新が再開しやした。 ( No.114 )
- 日時: 2011/03/05 17:47
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: 皆久しぶり!!
「な‥‥‥!!!」
絶句。 それ以上の言葉はなく。
何しろ絶傷刀はユーリの持つ長刀を折らなかった、否、折れなかったのだから。
第
3
6
話
決着は呆気なく
この硬直した雰囲気の中。
いまいち状況を飲み込めずにいながら、否、飲み込めない故にユーリはその隙を突いた。
力任せに剣を押し、鎌を弾く。
それを持った右手は吹き飛ばされ、振り戻す事ができない。
ユーリは左肩を使ってタックルし、それで怯んだ隙に右の拳で胸にアッパー。
そして左足で蹴り上げ、三段攻撃を全て命中させる。 余りの威力にルリは少し吹き飛んだ。
「な‥‥っ、なんだ‥‥‥その、剣はぁ‥‥‥‥‥‥っ!!!」
半ば四つん這いに近い状態でしゃがんでいるルリはユーリに尋ねる。
途切れ途切れ、搾り出されたような低く小さい声だが、それでも十分にユーリの耳に届く。
「んあ? ああ、『狼将刃』か?」
『狼将刃』とはユーリが左手で指差した物——————ユーリの持つ直刀にして長刀の得物だった。
ちなみに絶傷刀の一撃を受けて全く刃こぼれしていない。
「別に訊かれても俺にも分からねえんだけどな。 だってこれ、家の倉庫から勝手に取ったもんだから」
————————そして名前は俺が勝手につけたけど
最後は言おうと思ったが、余り長話になるのも困るので、やっぱり止めた。
「そうか‥‥‥」
ルリは少しよろめきながらも立ち上がり、絶傷刀を構える。
「と、いう事は、生半可なスピードではお前を倒せないわけかっ!!!」
よろめいて倒れたかと思えば、重心を前にして、初速を速めてのダッシュ。
ユーリの懐に向かわんと、彼は走り、絶傷刀を構える。
そして、ユーリから見て右から左に斬撃。
彼はそれを避け、その次に来た左から右の斬撃もかわす。
やはりこの刀では避けられてしまうと確信したルリは、ユーリから距離をとり、その刀を投げつける。
それを剣で弾いたユーリはもう一度彼を見る。
すると、構えていたのは拳銃。
“銃連刀”
銃身に刃がつき、グリップは普通の拳銃より若干ながら銃身と真っ直ぐになっている。
回転式連発銃、すなわち、ダブルアクションのリボルバー。
で、ありながら、オートマチック系の銃のように銃身が広い、奇妙な形。
そして、銃口をユーリに向けトリガーを引く。
乾いた大きな音放たれると同時に先端が尖った金色に近い色をした筒が飛び出す。
次に二発目、三発目、四発目、と撃っていく。
普通の拳銃では出せないスピードでユーリへ向かい、勿論の事、それすらも彼はかわす。
銃弾がユーリの許にやってきたのはこれで20発目。
ここで、ユーリは彼の持つ拳銃————ではなく刀、そしてその扱いを大体分析した。
まず、銃連刀は一般の拳銃と同じで六発が最大装填数。
次に、ハンドガン用マグナム弾でもないのにライフル並みのスピード。 かわすのもやっとのところである。
そして、再装填する時間が非常に短く、隙が少ない。
弾は何もない空間から取り出しているのであろうが、指使いが非常に優れている。
弾倉を開き、なくなった弾を補充し、それを装填する。 この間の時間、長くても3秒。
器用などというレベルではないだろう。
速い上に隙が少ないのでは近づくも何もあった物ではない。
「くっそ‥‥‥」
ユーリはある一つの覚悟を決めて、走り出し、次々撃ってくる銃弾をかわす。
逃げたのではなく、ルリを中心に円を描くように走り出す。
かと思えば、今度は彼に向かって一直線に走り出した。
そして刀を上空に投げ、先程より身軽となった彼は獣のような速さで右往左往しながらルリへと近づく。
瞬間、ある一発がユーリ左肩を掠めた。
呻き声を上げながらも、決してスピードは緩ませず、走り続ける。
「だあああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
狼が咆哮する様に、ユーリは叫び声を上げる。
ルリの、目の前にいた。
誰が? 何が? ユーリが。
いつ? 今。
何処で? ここで。
何故? 近づいたから。
どうやって? 走って。
普通なら答えられる5W1H、すなわち今この現状も、ルリにとっては理解するのに手間取った。
というより理解する暇がない。
ルリは反射で後ろに大きく退け、ユーリの斬撃をかわす。
殺意が1/1も出ているルリと違い、彼は本気で殺すつもりはなく、浅い一撃を放っていた。
故に、胸の傷は致命傷にならず、大きな掠り傷が出来たかのようだった。
ルリは銃連刀を投げ捨て、ユーリを見つめる。
よく見れば、左肩意外にも、その二の腕が貫通されている。
他にも、右頬にも掠り傷、右肩も貫通。
とは言え、未だに剣を振れるというのは腱などの筋が切れていない証拠。
それに、それほどの怪我を負って叫び声も上げないとは相当精神力がある。
————————敵ながらあっぱれ、というやつか
ルリは戦闘中であるにもかかわらず、微笑し、右手を腰の左の部分に持っていく。
そして、急に出てきた柄のような物を握る。 よく見れば、その柄からは薄鋭刀と同じ位の長さの刃が付いている。
更に、握った柄をゆっくり引いたその先は、鍔、そして刃。
その刃を全て引き抜くと、1mを祐に越えた、長い刃渡りだった。
片方には長い刃、片方には短い刃。 双方に刃が取り付いた刀。
「最早これを使わなければならないとは‥‥‥中々恐ろしい奴だ」
それを最後の言葉に、ルリはその長刀を構える。
ユーリもまた、それに応じるように刀を固く握り締めた。
一筋の風が流れ、緊迫感は細い糸の如く張り詰める。
だが、それを解き放たず、緩めさせたのは、自分達を囲む銃口だった。
気がつけば、ユーリとルリは青の制服を着た軍人達に囲まれ、一人一人が持つマシンガンの銃口を向けられている。
そして、その軍人の中から一人の少年が出てきた。
それは、レイン。
「これ以上、この街で騒ぎを起こすのは止めてもらおう。 私達と一緒に来てもらいます」
終 決 着 は 呆 気 な く