ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Gray Wolf ( No.24 )
- 日時: 2011/03/05 18:05
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: 小説 【Gray Wolf】 びみょーに更新中‥‥‥(宣伝マンが
第
1 侵
5 入
話
「おらあっ!!! もういっちょ!!!!」
ユーリが先の殴りで怯んだキメラの腹に跳び蹴りを与える。
その威力は凄まじく、自分の1,5倍はあるその巨体を軽く中に浮かせ、転倒させる程であった。
横から来た虎型のキメラにも空中で回転蹴りを2発連続で与える。
思わずよろめき、腰を沈ませたそれに、下から上方に掛けての殴りを与えた。
低い呻き声を漏らし、力なく自分に倒れていくキメラを横に避け、更に多数のキメラの元へと走った。
一方レインも負けてはいない。
その細身のサーベルを振り回し、キメラの硬い皮膚を切り裂いていく。
左手に持ったオートマチックの拳銃を前方に、乾いた音を響かせ撃つ。
右腕から電流が走る様に感じる貫通した痛みに躊躇し、その隙に目の前の少年に切り落とされた。
右に避けつつ斬り払い、下に下がった右の巨腕を伝って頭を脳ごと斬ったユーリは裂いた頭を踏み台にジャンプし、レインの真後ろに着地する。
既に抜刀した直刀を構え、レインに背中を預けるかの如く背を向け、意識を視界に広がる同じ姿のキメラたちに集中させた。
「ちっ。 こんなんじゃあ埒開かねえぞ。 どーする?」
「ああ。 僕も正直ここまで体力持ってかれるとは思わなかった」
「こりゃ早々に兵士に指示煽いだ方がいんじゃねーの? 師団長のくせに指示出すより先に飛び出しちゃうもんだから‥‥‥」
ユーリは溜息を混じらせ、下に俯いて呟いた。
彼の言葉に何を苛立ったのか、レインは険しい横顔でユーリを見る。
「どういうことだい? そもそも君がいきなり突っ込んで行ったからだろう?」
む、とその言葉にユーリも敏感に反応した。
「あのな、俺は遊撃隊なんだよ。 そもそもそれを言ったのお前だろ?」
「まだ作戦も開始していないのに突っ込む遊撃隊はいないよ。 もう少し考えて言うことだね」
「ほうほう。 味方がやられてんのに見捨てる奴かお前は? 酷いねー」
お互いに背中を向け合いながら言い争いをする彼らに痺れを切らしたか、キメラ達が一斉に襲い掛かる。
その周りの状況に逃さず理解した二人は構えなおし、互いに逆方向に突っ込んだ。
司令塔であるレインをなくし、行動ができないと思われていた第14師団はその実、普通のように街へと歩いてくるキメラを撃ち殺していた。
各大隊長が指示を出し、兵士達がそれに従っている。
ガトリング砲を8つ構え、合計何百発の銃弾を送り込んでいる。
だが、それほどの銃火器を使ってもギリギリ倒せるといった状況だ。
何十匹もおり、硬い皮膚に覆われている上、普通の動物の構造なら急所である部位を貫通しても中々死なない。
これ以上増えてしまったら対処しきれないと防壁に隠れて観察しているシエラは不安になる。
だが現実はこうも厳しいものか。
こちらの様子に気づいた他のキメラ達が大勢でこちらへ走って迫ってくる。
その光景に開いた口が塞がらない兵士達は慌てて銃弾を運び、撃ち放つ作業を早める。
だが、その数はたかだか八丁のガトリング砲で抑えるには無理がありすぎた。
これ以上は無駄だと判断した大隊長3人は兵士全員に指示を送り、その場に武器を置いて潔く逃げる。
後10秒判断が遅れていたらひき殺されていたことだろう。
置いていた八丁の機関銃は粉々に破壊され、それに目もくれず街へ走る。
その事態にいち早く気づいていたユーリはキメラ達の大群の横で刀を構え、炎を噴出させる。
周りを紅く照らし、目に見えない靄を出す刀はやがてユーリの斬り降ろしによって炎牙斬と化す。
横に薙いで放った紅い斬撃は高速で群れの中へ突っ込む。
小さな爆発が起こり、多数のキメラを大きく吹っ飛ばした。
だが、それでも半分には程遠いほどまだ大量に残っている。
キメラ達は一瞬こちらを睨み付けたが、すぐに街のほうへと全速力で駆ける。
普通の人間では追いつけないほどの速度で。
「逃げられちまったか‥‥‥」
ユーリは舌打ちをしながら街の中へ消えていくキメラの群れを見つめた。
「————————ここに居る兵士全員分かっている通り、キメラ達が街へ侵入した!!! 恐らくあのペースだと住民の避難所まで持って一時間だろう! その間に全て掃討する!!!!」
ユーリは隅でレインが話している作戦を聞く。
まあ、俺は関係ないんだけどな———————
少し微笑んでしばらくすると、どうやら作戦の確認は終わったようで、兵士が街の中まで走っていった。
それを見、自分も行こうとシエラを呼ぶ。
こちらへ駆け寄り、深刻そうな顔を俯かせている。
「さ、とっとと行こうぜ。 あいつ等に遅れると仕事がなくなる」
声に出しながら頷き、更にユーリの傍へ寄った。
やがて街へ走り出し、ユーリはシエラがついて来られるペースに合わせようとする。
その様子を、遠くにあった林から双眼鏡で観察する一人の男の姿が合った—————
侵
入
終