ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Gray Wolf ( ・∀・)<現在休載中だからな! ( No.30 )
- 日時: 2011/01/22 09:50
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: 更新できたよー!!!
第 1 7 話
勧 誘 者
日に照らされ、反射する黒髪と黒い瞳。
カンフー服の上に着た黄色い和風の上着。
下から上にかけて幅が広くなる刃の剣。
その視界の真ん中に入る人物によって斬られたキメラに魂は灯っていない。
ユーリは固い表情でその男に訊く。
「…誰だ、てめえは」
「ん? 俺か? まあお前に用があって来たんだけど‥‥‥」
思わず疑問の言葉を漏らす。
ユーリは語調を強め、更に質問を投げる。
「俺、お前見たいな知り合いいないんだけど。 その俺に何の用だ?」
段々と口調を強めてきたユーリに怖気づいたか、それともただのギャグか、男は半歩後ろに下がる
だが、やがて顔を真面目にし、はっきりと言った。
「俺は、いや“俺達”は、お前みたいな奴を必要としている。 一緒に来てくれない?」
わけが分からない。 単刀直入にも程がある。
表情を崩し、疑問に満ちた顔を浮かべるユーリに気づき、男は軽く謝って説明しだした。
「俺は傭兵団のレン・ウォン(御 蓮)。 ちょいと上の方に頼まれた仕事をやってる」
「‥‥‥仕事だと?」
「ああ。 新しい人材を探してほしい、ってさ。 そんであるときお前を見つけたんだ。 それで—————」
「—————俺を見つけたって訳か」
頭の中で言ったと思った言葉が口の外に漏れた。
「おお! 理解が早いな! その通り、俺はお前を勧誘しようと思った」
レンの話によればユーリの事は街の外で戦っていたときから見ていたらしい。
傭兵団に必要な人材を求めていたときについたフェルトシティの近くでキメラが接近している話を聞いて、近くの森に避難していたそうだ。
理由は二つで、一つはキメラと軍の戦いに巻き込まれたくないこと。
もう一つはもしかしたら軍に強い奴が雇われているかもしれない、と思ったからだ。
そして、案の定ユーリが出てきて、キメラを一人で十匹以上を相手にしたのだ。
「どうだ? 仲間になんないか? 今なら入団金無料だぜ?」
遠くに離れているというのにレンは差し伸べるように開いた右手を前に伸ばす。
だが、彼の期待は呆気なく壊された。
「断る」
その一言がレンの上々とした気分を沈ませた。
「え‥‥‥。 何で?」
「ま、確かに俺の性格にはあっているかもな。 でも俺は今の生活で十分満足している。 それだけだ」
そこでレンは何を考えたのか、左手で握ってた剣の柄を更に固く握り締める。
担いでた肩から下ろし、構えの体勢に入ろうとした。
先程まで感じられなかった殺気はユーリにも分かり、思わず身構える。
「そ‥‥‥。 じゃ、仕方ないよな。 一応上の人にもし断ったら力尽くで納得させろって言われてるし‥‥‥‥なっ!!!!」
最後の一文字を言い放ったと同時にレンは前へ走り出す。
ユーリとレンの距離、僅か30m。
レンは剣を左手に、前へと突っ込んだまま。
ユーリは咄嗟に腰から鞘を取り出し、刀をそこにしまった。
そして刀を弄ぶかのように振り回し、右手の裏手に持ち変える。
その後すぐにレンが右から斬撃を与え、ユーリは右手に持った剣の鞘で受けとめる。
その次、
一撃目。 左から剣が来、左手の鉄甲で防ぐ。
二撃目。 上から振り下ろされる。 それを鞘で止めた。
三撃目。 左から来る。 それを一歩後ろに下がってかわす。
四撃目。 右から来た。 鉄甲の手袋を左に振り、受け流す。
五撃目。 下から来た斬撃を後ろに大きく下がって避ける。
これだけの攻撃をたった約1,5秒で行っている。
それほどの速さを持つ武器は大抵、ナイフなどの小型の物か軽量化された武器。
だがそれらは攻撃も軽く、簡単に弾き返せる。
その筈なのにレンが放つ攻撃は相当の威力だった。
「やっぱ気づいた?」
まるでユーリの思考を透視したようにレンは笑いながら訊く。
ユーリはついた膝をもう一度立たせ、また体術の構えに戻す。
「確かに俺の剣は軽い素材で出来ている。 けどな、柳葉刀って知ってるか? こいつがそれなんだが…まあ見た目の通り“遠心力”を利用出来易い。 つまり‥‥‥」
また突っ込みだした。
ユーリも構えに集中し、じきに来る攻撃を静かに待った。
当然、その斬撃の嵐はユーリを襲い、彼もそれに対抗する。
「威力が高い攻撃を隙無く連発することが出来る!!!!!」
斬撃の嵐は更に勢いを強めた。
ユーリもそれに合わせる様に攻撃の速度を増させる。
「ほらほらどうした!! さっさとその剣抜いたほうが良いんじゃねえか? 手加減するつもりか?」
かなり勢いを増した嵐は最早常人では追いつけない。
流石のユーリも、これには耐えられない—————————と思われた。
「確かにパワーの問題では剣抜いたほうがいいかもな」
ユーリの拳、蹴りのスピードが増してくる。
その身軽な体を振り回し、攻撃速度はレンと互角となっていた。
「けど、お前見たいな奴と戦うには相当な攻撃スピードが必要だ」
前に突き出したレンの刀を左に避け、右の拳を突き出す。
その一撃をかわし、後ろに下がった。
そしてユーリは更に攻撃を与えんとレンに接近する。
「だから、体術さえ使えば振りが短い分、際限なく攻撃が出来る!!!」
目の前で再び来たレンの突きをギリギリかわし、右の拳を突き出す。
その鉄拳は顔面まではいかなかったものの、左肩を捉え、後ろに吹っ飛ぶ。
足を強く踏みしめ、その一撃に耐えたレンは殴られた肩を軽く擦った。
ユーリもまた、左頬に出来た血の垂れた小さな傷を手で確認する。
者 誘 勧
終