ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Gray Wolf 更新再開 ( No.31 )
- 日時: 2011/01/24 17:01
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: 更新できたよー!!!
第
1
8
話
退 魔 秘 術
刃と刃が火花を散らしてぶつかり合う。
否、片方は鞘を付けているのだから刃と鞘といったところであろう。
ユーリは左の足で蹴りをだしたが、レンはすかさず後ろに戻る。
回し蹴りの勢いで一回転したユーリは体勢を元に戻す。
「‥‥‥さっき、お前は『体術なら隙無く攻撃が出来る』っていったな」
レンがいつ攻撃が来ようとも反撃できる状態のまま問う。
その答えに、ユーリは少しの間で話した。
「…ああ。 剣をしまって体術のみに集中するのも戦法の一つだ」
「つまり手加減はしてはいない、と‥‥‥」
確かにレンの強烈な叩き込みの連続を回避するにも、格闘術をつかって反撃するのは賢いやり方だ。
————————それなら
レンは右手の力を緩め、縄のようにブランと揺らして下に下がる。
だが、降参したわけではないことは未だ立ち込める殺気で分かった。
「なら、俺のこれも戦法の一つっていっていいのか?」
ユーリは構えを更に固くし、何時くる攻撃にも耐えられるぐらいに地面を踏み込む。
レンが下げた右腕の服の裾から白い紙切れを出す。
何枚か出てきたその紙を右手に掴み、構える。
その手の圧力を緩め、白紙を中に舞わす。
その紙には複雑な紋章が刻まれており、それがユーリに驚愕の印象を与える。
「退魔秘術第54番——————」
舞った紙が生きている様に列に並び、刻まれた紋章が光りだす。
「焼炎砲!!!!!」
瞬間、紙は塵となり、同時に虚空から巨大な炎がユーリを襲う。
真っ直ぐ突き進み、触れたものを焼き尽くすその劫火は遠くにいる者でも熱気が伝わった。
ユーリはすかさず斜め前へ飛び出し、炎をかわしつつ、前へ飛び出した。
炎はユーリの真横で噴射されており、その熱風が気になるが、迷わずそのまま走り続けた。
跳躍し、構え、右足を前へ突き出す。
それを受ける者はすぐ直前で剣で止める。
しかし、硬く厚いブーツの底を切り裂くことは出来なかった。
レンは更に右袖から紙を取り出し、ユーリの目の前で並べる。
即座に後ろに飛び戻り、その直後に来た手裏剣の群を鞘で叩き落す。
塵に消えた紙の後ろにいたレンは、少し驚愕しながらも、余裕そうに笑みを浮かべる。
それに対抗してか、ユーリも微笑を浮かべた。
「すごいな。 退魔秘術第47番『裂傷風刃』を全部防ぐなんて」
「お前もすげえな。 退魔秘術を覚えている奴に会うのは初めてだ」
退魔秘術。
魔術分野の一つであり、唯一「数が有限である」魔術である。
東の国、中国—————中華文化民主主義国から来た賢者によって作られた物で、元々妖と呼ばれたキメラに対抗するために作られた魔術である。
108種と数が限られた魔術で、それぞれには番号がある。
その番号が少なければ少ないほど性能が高く、逆に多ければ多いほど能力も劣る。
魔方陣、というより紋章の描かれた札を使って発動し、その札の種類によって発動する物も違う。
「——————お前、まさか全部の退魔秘術覚えてたりする‥‥‥のな」
ユーリは未だ微笑むレンを見、納得する。
深呼吸するように息を吐き出し、裏手に持った刀を、鞘で持たず、しっかり柄を握って構える。
「んじゃ俺も一つ使いますか。 ‥‥‥魔術をな」
鞘から炎が噴き出す。
レンはその現象が魔術であることを即座に認識し、両手を持って真正面に構える。
上から下へ勢い良く振り下ろし、同時に蓄積された炎が剣筋に沿って直進する。
地面を焼き、切り裂き、飛んでいく。
だが、レンはそれに臆することなく構え続ける。
そして
「————— 壱刃華・弟切斬!!!」
———————振りかぶり、振り下ろし、両断する。
放った炎牙斬が真っ二つに解れ、消え去った。
光る軌跡。 魔術を粉砕する斬撃。
その出来事に驚きを隠すことの出来ないユーリにレンは指摘する。
「退魔秘術だけ覚えてると思うなよ」
退
魔
終
秘
術