ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Gray Wolf キャラ画像募集します。 ( No.67 )
日時: 2010/12/24 14:27
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
参照: Σ( `@А@´)<何だって!? 参照200!!?(それがどうした


構える龍。 逃げ場のないレン。
ガードも出来ないこの無防備の状態で腕の一撃を受ければ、恐らく死ぬことは確定であろう。
何とかして体勢を立て直そうとしたが、空中で落ちる風圧でそれが出来ない。

龍は引いた右腕に力を溜め、咆哮を轟かせた。


第  2
                風 土 術

   8  話


その龍の真後ろに、全速力で走るユーリ。
長い尾に飛び掛り、掴み、よじ登る。
尾の根元へ行き、、背中の上を走り、左肩に到達した。
そこから更に前へ跳躍し、龍の頭の横を通り過ぎた。
飛び込むような状態で刀に覇気を集中させ、刃から炎を噴出させる。
そして横たわったその体を左へ回転させ、その勢いを乗せて真横に炎牙斬を放つ。
キメラが右腕を前に勢い良く突き出したと同時に、目の前を紅い三日月が通り過ぎた。

思い通り腕の真ん中へ直撃し、斬りおとした、とまではいかないが、それでもかなりの一撃だと思う。
出した右腕の軌道は逸れ、レンから見て左側へ放たれた。
その風圧により結局は吹き飛んだが、おかげで体勢は整われ、うまく着地する。
直後に空中で体を回転させていたユーリが左の手の平と右膝を地面につけ、立ち上がった、
「お前な‥‥‥出てきて早々殺されかけるって…アホだろ」
「なっ‥‥‥お前が早く来いって頼んだんだろ!!!」
馬鹿にするように声を低くしたユーリにレンが声を荒げる。
「まあ確かにその通りだけど‥‥なっ!!」
瞬間、背後から火球が飛んでくる。
二人は避け、更に飛んできた火球の群れは走るユーリに向かう。
龍の周囲を走り回りながら火球をかわすが、絶え間なく攻撃するために反撃が出来ない。

——————これじゃあ、やられる一方だな

——————あんま試してねえけどやってみるか

埒が空かないと判断したユーリは走りを止め、龍を正面に刀を構える。
そして、飛んできた火球を真っ直ぐ見つめ、剣を振った。
が、振り切ったわけではなく、刃を正面に向けるように剣を立てただけである。
「シルドフラッド!!!!!」
叫び声ともいえる大声を上げ、刃から水が漏れ、噴射される。
それは壁の様に平たく伸び、向かってくる火球を抑えこんだ。
抑えこまれた火球は消え、そこから真っ直ぐ進み始める。


だが、キメラは咆哮と共に両翼を大きく振り、ユーリの体を吹き飛ばした。
うまく地面に足を接させることは出来たが、攻撃が止んだだけで攻め込むことは出来ないという事が判断できる。

龍は横を向き、レン、シエラ、レフィがいるところにも突風を巻き起こそうと両翼を後ろに引く。

————————風‥‥‥

レフィは左手に持つナイフを前に出す。
吹いてきた風にレンとシエラはずり下がったが、レフィは踏ん張り続け、左手のナイフを未だ前へ出し続ける。
刻み込まれた魔方陣が光りだし、吹いた風は段々止んだ。
そのナイフを振りかぶり、振り下ろすと小さな竜巻が高速に空気を貫き、龍の頭へ直撃した。
巨大な図体を大きく飛ばし、それに三人は驚く。
中でも驚いたのはユーリ。
————————風土術!!


風土術というのは魔術分野の一つ。
普通の魔術とは違い、自然エネルギーを取り込んで発動する。
自然エネルギーとは、風、水流、氷点下の冷気、炎、地震など、理によって起こる物が持つエネルギーの事である。
その取り込んだ自然エネルギーを溜め込み、放出するのが風土術である。
勿論、そのエネルギーを通すための通り道は行使者の覇気を必要とするが、その覇気の量は全体の一割にも満たない。


今まで、彼女が魔方陣を刻んでいるにもかかわらず、右手のナイフからしか魔術を発生させていなかった。
それは発生させなかったのではなく、出来なかったからだ。
自然エネルギーがなければ、風土術は発生できない。 その為、風土術だけしか使えない魔術師は不便極まりない。
彼女の魔方陣を良く見たことはないが、恐らく炎、水、地、風、雷を示す五つの絵を五つの円の中に描き込み、それらを更に大きな円で繋げているのだろう。
風土術の陣の特徴である。



ユーリは怯む龍へ一気に突っ込む。
走力を出し切り、出来た隙を逃さないよう、すぐにたどり着かんと走り続ける。
そのユーリに気づいたキメラは左腕を構え、ユーリへと突き出した。
跳躍し、その拳を受け止め、跳び箱の様に扱い、前方へ倒立回転して跳んだ。
飛距離は長く、一秒も経たない内に龍の目の前まで迫った。
口へつかまり、よじ登り、心臓部分と思われる背中まで走る。
刀を構え、背中へ突き刺す。
だが、鎧の様な皮は硬く、全く貫けない。
そして、体を大きく振るキメラに飛ばされ、地面へ落とされた。
うまく地面に着き、構えなおした。
その瞬間に、ユーリに向かって腕を突き出す。
だが、それを剣で受け止め、腕力で巨腕の一撃を防いだ。
あまりに強く振った勢いで、手の平さえつつむ鎧の皮にひびが入り、腕の動きが止まった。
それを見逃さなかったユーリはまたすぐに構えなおし、大きく刀を振る。
斬り、また斬り、ついに皮は破れ、それと共に受けた傷から血が噴射された。
それに当たらないようユーリは後ろへ大きく下がり、様子を見る。

余りの激痛に叫び声を上げ、思わず怯んだ。
龍は羽ばたいて飛び上がり、ユーリへ突進していく。
翼を使って更に速力を上げ、左手を振って、ユーリに当てた。
その勢いは、剣で受け止めても押さえられず、そのまま大きく吹っ飛ぶ。
舌打ちしながら体勢を直したが、目に映ったのは傍にあった岩を掴み、投げる龍の姿。
斜め下に落ちていくユーリより遥かに速く直進し、残り20mのところまで迫る。
その岩をまたユーリは跳び箱の様に扱い、今度は開脚して飛び越える。
その為下に落ちる勢いは弱り、着地しても痛みを感じることはなかった。
だが、何にせよこのままでは龍の怒りは抑えられない。
「厄介だな‥‥‥」
ユーリは切れた口の中に溜まった地面に吐き出し、顔をしかめさせた。





        風  土  術

                        終