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Re: Gray Wolf 第2章 ( No.88 )
日時: 2011/01/02 21:36
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
参照: ハッピーニューイヤアアアアアアア!!!(Σ今更悲鳴ー


「ひ、ひいいいっ!!!!!!!!」
脅えていたスーツの男達が情けない悲鳴を上げて逃げ出す。
それを追いかけようとしたが、
「私が追いかけます!」
とレフィが有無を言わさず行き、シエラもそれについていった。
レンが刀を取り出しながらユーリの後ろに立つ。

彼らの様子を不思議がりながらも、黒髪の男は巨大な剣を構えた。


 第
     3
             重の剣と軽の剣
     2
 話


「新手、か‥‥‥」
黒髪の男はユーリ達に聞こえないぐらいの小さい声で呟く。
「おい、大丈夫か? 他人のゴタゴタに手ぇ出して」
「こんなところでドンパチやられるとこっちも迷惑だからな。 それに、それ持ってる奴の言葉じゃねえぜ」
逃げる住民を見て焦るレンの刀をユーリは指差す。
それに何も言えなくなり、改めて構えなおした。

同時に、男は飛び出す。
巨大な刀を右から左へ薙ぎ、ユーリはその振りを避けた。
斬撃の後にもまた斬撃が、それはレンに迫った。
その薙ぎ払いを避け、次に来た上からの斬撃を剣で受け止める。



「がはあっ!!!!」

その一撃はあまりに重く、足を崩して巨剣ごと地面へ倒れこんだ。
ユーリは跳躍し、右足を前へ突き出した。
男はそれを避け、間合いを取る。
「生きてっかぁ? 今の相当利いたろ」
ユーリは男を目の中心に集中させたまま、レンに問う。
余裕の如く笑いながら言うが、レン本人はかなりダメージを受けている。
咳き込み、その口からは血が数滴垂れた。
「ゲホッ、ガホッ!! 利いた所じゃねえ! 肋骨一本ひび入ったぞ! ユーリ、あいつの剣は普通じゃねえ!! 重さが尋常じゃねえぞ!!!!」
「ああ、振ったときに生じる乱気流が結構ヤバかったから‥‥‥な!!!!!」
右手に鞘付きの刀を裏手に持って前へ飛び出す。
凄まじい速度で打撃を繰り出し、それを全て巨大な鋸状の刃で防ぐ。
何発か剣越しに攻撃を受けた後、構え、振り下ろす。
それを横に飛んでかわし、砕けていく地面を見ながら驚愕の意味を込めて口笛を吹く。


飛び込む体勢の体が地面へ付きそうな瞬間、左手の平を付けて前転する。
そこへ男は攻め込み、巨剣を振り回した。
咄嗟に刀を握り、受け止める。
レンのときとは違い、ユーリの場合は受け止められた。
それを男は驚きと疑問の表情を浮かべ、ユーリから大きく距離をとった。
——————っ、痛えなこの野郎
——————手がヒリヒリしやがる
ユーリは痺れた右腕を左手の平で叩く。


——————崩鋸刀の一撃が簡単に防がれるとはな‥‥‥
男は自分の持つ刀を見る。
崩鋸刀、そう呼ばれた刀を更に握り締め、ユーリを見つめた。
そして、開いた左手を右腰の位置に持っていき、刀を抜くような体勢をとる。
そこから出てきたのは一本の棒。
虚空より出てきたそれを握ると、一気に抜き取る。
大気の穴から出てきたそれの正体は、一本の脇差。
右手に持つ巨剣とは比べるまでも無いほど、小さな小刀だった。
崩鋸刀を担ぐように持ち、脇差を前に出し、独特の構えを取る。



いきなり突っ込んできた男に、咄嗟に刀を抜いて太刀打ちする。
レンの剣術並みに素早い小刀による斬撃は防ぐのには苦労する。
その幾つかの斬撃の後に今まで控えていた巨剣が振り下ろされた。
それをかわし、右に逃げたユーリは男を向いたまま、周りを走り続ける。
男はユーリの走る方向の少し前に向かって走り出す。
その向かう先と丁度彼の姿が重なり、男は左手の小刀を振り回す。

それらすべてを刃で弾き、やがて右の剣が振る準備が終わった頃。
ユーリは高く跳躍して男に迫った瞬間、下から上がって来た巨大な刃によって斬撃を受け止められ、体ごと打ち上げられる。
地上から10m離れたその空中で、宙返りを一つ。 そうして降りると同時に巨剣の斬撃がまた来た。
薙ぎ払いを剣で受け止めようとも、重力によって強すぎるそれはユーリの体をまた吹き飛ばした。

水平に近い状態で吹き飛ぶユーリ。
また1回宙返りをして、足を地面に着けた。
地面を後ろ向きで滑り、やがて止まる。
すると、前から巨剣を構えて走ってくる姿がある。
その刃には。丸い紋章のような物が光っている。
不思議には思ったが、ユーリは崩鋸刀の届かない、なるべく後ろの方へ跳んで避けた。
しかし、それが間違いであり、後悔する事になった。


「鬼神九刀流——————」


その言葉に、ユーリは驚きを隠すはずは無かった。
彼が巨剣を地面に振り下ろした瞬間、そこからユーリの立つ位置にかけて地面が砕けた。
更に、その砕けた地面から棘状の岩が飛び出る。

鋭い先端を持つそれはユーリの左肩、右の二の腕を突き刺す。
と、までは行かなかったが、掠っただけでも結構な血が噴き出た。

「魔術奥義・裂崩鋸壊」

呻き声を漏らし、痛みが肩や腕から全身へ走っていくが、それに怯む暇など無い。
後ろへもう一度跳び、その棘岩から逃れる。

何とか逃れ、落ち着いた瞬間に男の左手に持っていた筈の小刀が回転しながら飛んできた。
それを左手のグローブに付く鉄甲で弾くと今度は鋸の巨剣も飛んでくる。
驚きながらもそれをかわし、落ち着いてから彼を見る。




そこには、またもや虚空から一本の矛を取り出す姿が見えた。





     重   軽

     の   の

     剣   剣
                    終       
       と