ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 科学者と兎被り狼少年と楽観的少女 ( No.1 )
日時: 2010/11/06 17:02
名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)

∮ プロローグ

「一緒に来ぉへん? それとも……此処で死にたい
か?」

そう言って、あの日僕に手を差し伸べてくれた。
僕の手も、アイツの手も血で汚れていた。だからこそその手を握る事が出来たのかもしれない。
さっきまで他の奴に向けていた殺気のありまくりな目が、やけに優しくなったからなのかもしれない。
実際のところ、今でも理由は分からない。


あの日繋いだ手を、僕は二度と離さない。


そう誓ったから。


「何や、面白いガキやなぁ……」

そう言って僕にライフルを持たせたあの日を忘れない。僕に“さようなら”を教えてくれたあの日。
普通の人が見ればそれはおかしい事だって知っていた。けれどそれが——————何?
アイツは僕に生きる術としてライフルを与えてくれたんだから、何もおかしい事は無い。
それにもしこのライフルが無ければ、何回死んでいたかすら分からないのだから。


これが幸か、不幸か?


だから言ったろ、考えてる暇何て無いって。


あの日繋いだ手を、僕は二度と離さない。


そう勝手に誓ったんだから。……ねぇ?





孤児、親殺し、上玉……与えられてもちっとも嬉しくない称号をぶち壊してくれたのはアイツだった。
いや、「だった」じゃなくて……「だ」と言うべきか。今この時だって僕とアイツは一緒に居る。
あの地獄みたいだった国から抜け出して、日本とか言う国に逃げてきて一緒に居るんだ。

「日本に来たからって安心したらあかんで? いつだって《鎖》は追いかけてくるんや」

そう言ってアイツは僕の頭を撫でる。そしてその言葉の深い深い意味まで僕は知っていた。
……否、分かってしまった。あの冷たい目を見て彼の心の真意を知ってしまったんだ。
だから僕はこう言ってやった。

「《鎖》を見たら迷わず始末しろ……でしょ?」
「勘がえぇなぁ。話しやすいわぁ」

「分かってるよ? 僕はいつだってお前に従って着いてきているんだから」





闇夜の中、日本に着たばかりの僕はそう言った。



知っている。僕はいつだって《鎖》に追われているんだと言う事を…………