ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Are You OK? 参照100突破しました! ( No.34 )
- 日時: 2010/12/12 15:25
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
第7話遅くなりましたが続きです
☆★
「……本当にこんな広い世界を探せだなんて、無茶を言うよね、エリィは」
そう言いながら黒い翼を生やして空を飛んでいるとはハニーだ。
「もしもこいつがこの“ニホン”から違う国へ行ってれば意味ないだろうし……」
ぶつぶつと文句を言いながらも、あちこちと色んなところを見渡す。
———それにしても…
———なんて眺めの良い国だろう、“ニホン”は。
———妖精界では見ることの出来ないものもあるし…
———生まれ変わったら人間になりたいな。
そんな平凡じみた考えを隅に追いやり、ハニーは何かを見つめた。
黒いボサボサの羽。
小柄な男。
うずくまっている。
———もしかして……?
ハニーは先程エリィに渡された写真とその男を交互に見る。
———間違い無い、あいつだ。
そのままふわりと地上に降り、ハニーは男に問いかける。
「おい、お前。妖精界へ帰れなくなった黒妖精さん」
「は、はい?」
———そこで真面目に返事すんなよ。
思いながらも、
「『仕事』で、貴方を迎えに参りました。どうぞこちらの穴へ」
「?仕事とは?」
見るからに?『疑問マーク』を背後に浮かべているかのような表情をする男。
此処で説明をせずこの男を穴に突き落としても良いのだが、後から何かをゴタゴタ言われるのも面倒だ、と思ったハニーは、『仕事』について説明をし始めた。
「『仕事』っていうのはまぁ、簡単に言えば依頼されたことをこなすことです。ごく普通な、当たり前なことですよ。で、それに成功すると報酬が貰えたりします。失敗しても、どうってことは無いんですけどね」
今更ながら、自分がこんなにも敬語を使えることに驚くハニー。
しかし当の敬語を使われている男は、ハニーに質問をする。
「それをやるにはどうすればいいんだい」
「………色々テストとかやんなきゃいけないんです……よッ!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!?」
もう答えるのが面倒になってきた、と言わんばかりに男を無理矢理穴へ突き飛ばすハニー。それから、何やらブツブツと呪文のような何かを唱え始めた。
———『言力』。彼ら黒妖精の一部が使える、名のとおり『言葉』を使った力である。
そんな意味不明な呪文を唱え終えたハニーの足元には、黒い水溜りのようなものが出来ていた。
それが出てきたことを確認し、ハニーは次に、
『エリィ』
と、名前を呼んだ。すると、黒い水溜りには、エリィの顔が浮かんだ。少し疲れて、返り血が頬に付着しているエリィの顔が。
「エリィ、ボクだけど…『仕事』は終わらせといたよ。それとキミ…何やってんの?今何処?」
『質問は1つずつ言いなさいよ、私の答える時間をきちんと計算しなさいよ、その脳の無い頭で。
とりあえず、『仕事』が終わったのなら私から次の連絡が入るまでは遊んでていいわ。
で、何やってるって、見れば解るでしょう、『仕事』よ。誰かに目玉に毒薬でも塗られたのかしら?
で、今はアメリカにいるわ。
他に質問は無い?無いなら切るわよ、私まだ『仕事』沢山残ってるんだから。貴方みたいに暇持て余して遊んでるお子様じゃないの』
「……別に何も無いよ。じゃあね」
そう言って、一方的に連絡を切るハニー。
ぽすん、とその場に座ってみる。
ハニーの姿に気付かない大人達は、急ぐように歩いていく。いつの間にか、何処を見てもそんな光景が目に入るようになっていた。
———嗚呼、暇だな。
———そういえば、ボクは何の為に人間界に来たんだっけ?
———気晴らしの為?
———違う気がする。
———ボクがのどの奥まで出掛かっているモヤモヤを、吐き出す為のゴミ捨て場?
———何でだろう、考えれば考える程モヤモヤが募っていく。
———彼女を撃ったことを、後悔してないって思ってた。
———でも、思えば思う度それは嘘になってる。
「……ねぇ、あんた」
———誰だよ、ボクが考え事をしている最中に話し掛けてくる奴は。
そう思いながらも横を見ると、
「あんたさ、黒妖精?」「キミ白妖精?」
同じような質問が、同時にハニーともう1人の口から出た。
「……そう、俺は白妖精だ。今、バイト中で……」
———妖精が人間界でバイトすんなよ。
そんなツッコミは抑えて、ハニーは言った。
「キミさ、ボクを案内してくれないかな?」
「この“ニホン”を、案内してほしいんだよ」
種族が違ったって、考えることは同じかもしれない。
byハニー