ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Are You OK? ( No.35 )
日時: 2010/12/17 19:14
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)

                        第8話『声を聞かせてよ』

———ああもう、やっぱり人間ってうざったいわね。
———こんな汚いカス共を、どうして妖精の私なんかが始末しなくちゃいけないのよ。

現在地、アメリカ。そこに1人の女性の姿と、数人の男性が血まみれで倒れていた。

血まみれといっても、女性のほうは返り血なのだが。

そんな返り血を浴びた女性———エリィ・ブァーンが、小さな溜息を吐きながら1人の———否、1つの死体の腹を抉る。

「全く、こんな汚らしい奴の身体の何処に“アレ”があるのよ」

何かを捜し求めながら。





                           ☆★




「ねぇ、そろそろ下ろしてくれない?」
「ああ、すみませんね、フレイブル様」

夜のハッピータウンの地上に降り立つ影。どう考えても影からして白妖精ではないことが解る。

「で、あの小さい白妖精がハニーが“殺した”奴?」
「御察しの通り」

黒妖精のフレイブル・アルクレイド、その使用人のヒミミャ・フールガスその2人である。

「で、結局あの子は生きてるってわけね。
あー、情けない。ハニーったらバカね、どうしてあんな奴の1人も殺すこと出来ないの?そーいう優しさは黒妖精には必要無いのに」

———その優しさに惚れたんでしょう、貴方は。
そう言いたくなるのを必死にこらえるヒミミャ。

「さてフレイブル様、彼女の生存が確認出来たことですので、いったん身を引きましょう」
「はぁ?何で?どうしてあいつを殺さないの?意味判んない」

———彼女の生存をハニー様にお伝えしたほうが喜ばれるでしょ。

「それは色々と理由があるからですよ。
ではフレイブル様、この穴の中へどうぞ—————」





                           ☆★




「クロス、体調は」
全体的に真っ白で病室のようなクロスの部屋。そこに3人はいた。

「うん、少しよくなったかな」

———それにしても…
———この傷で病気になっちゃうなんて、心外だな。

クロスはまだ黒妖精———ハニー・ミッシアムに撃たれた腹の傷を見ていた。
撃たれた直後よりは痛みはマシになったものの、やはり少しでも身体を動かすと、痛みが身体中を巡る。それでも彼女はハニーを恨んだりはしていなかった。

———だって、当たり前のことだもの。
———黒妖精が白妖精を殺すなんて、日常茶飯事なんだから。

「クロス、今日は早く寝たほうがいい。私達ももう部屋に戻るから」
そう言って立ち上がるアクロマニュムに、隣にいたスベイクも立ち上がり、軽く手を振った。

「うん、お休みなさい」




















妖精はいつでも死と背中合わせで生きているのです。
byヒミミャ