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Re: : パストカット No.2 : ( No.1 )
日時: 2010/11/08 15:19
名前: 飛びたい熊 ◆cKKHa6WOvw (ID: bfLmeFkK)

Outline…

海の向こうに明かりがちらちらと覗いた。
風の音しかしない静けさのなか、一人少年が淋しく、だが存在感は強く立っていた。
潮風が少年の髪を揺らしていく。
海の向こうにあった明かりがすでに近くにきて、波とともに、怒りのように紅く揺らめいている。
少年が手にしていたマルーンの手帳が突然、震えだした。
それを数秒見つめていたが、やがて、手帳をあるページで開き、そのページに眼をおとした。
明かりが灯台にぐんぐん近づくにつれ、獣のような叫び声が明かりからあがったと共に、風を切る音にのせて鋭く光る矢が、少年の毛先を切り裂いた。
少年が顔をあげると、矢を放つ明かりを見て悲しそうに顔を歪め、再び手帳に眼をおとすと何やら呟いた。
すると、明かりの先頭付近から火の粉が散り、熱風と爆発音が海面に轟いた。
しかし、奥から前へ前へと明かりは増える一方だった。
それを見た少年が手帳を開き、また何かを呟く。
途端、少年の右眼が蒼く輝きだした。
手帳を持つ手を胸の高さで空につき出し、その手をゆっくりとし動作で開いた。
マルーンの手帳が風を受けて、自らページをめくらせた。
やがて手帳が明かりの先頭に落ちると、手帳が風を作り、明かりのなかを波打ちながら一気に走って行った。

明かりも、海の波も、空気もが動きを止め、音一つしない世界と化したなかを、少年がゆっくりと歩いて行く。
少年が、すっかりぼろぼろになった手帳を見つけ拾うと、優しく、かぶっていた土を払い再びその場においた。

何もかもが止まり動いている物は一つもなくなった海に、蒼い炎が一面に広まった。
そして数分間の沈黙の後に、波と風の音が響いた。