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Re: 木漏れ日の姫。 ( No.21 )
日時: 2010/11/24 19:36
名前: 栞。 ◆KsWCjhC.fU (ID: Omr4T4uD)

第五話「王女」

 「セリシアが国の視察に行きたいと言っていてね。それで君に護衛を頼みに来たんだ」
 グレンがやれやれ、といった顔をする。
「どこを回るのですか?」
 レオは完全に仕事の顔。
「とりあえず城下町を回って、その後、森を見たいらしい」
「…森……」
 レオはグレンに聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「それじゃあ、頼むよ」
「はい」
 そう言ってグレンはレオの自室を出た。

「森…か……」
 レオは静かに体を椅子にうずめた。
(そういえばこの前の娘はどうなったのだろう…)
 レオはつい最近出会った娘のことを思い返していた。

 この前、レオが偵察に行った時のことだ。
 レオが誤って犬神の森に足を踏み入れた時、黒髪の娘がいたのだ。
(犬神はあの娘を拾ったと言っていたが……)
 レオはあの時のことを思い出していた。
(あの娘が森にいたのはいいとして)
 レオが疑問に思っているのは、娘の容姿のことだった。
(あの娘は黒髪だった)

 この国での黒髪は特別だった。
 黒髪は王族という印なのだ。
(どうしてあの娘は黒髪だったのだろう……)
 レオは考えたが答えは見つからず、新たな疑問が浮かぶばかりだった。