ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 木漏れ日の姫。 ( No.25 )
日時: 2010/11/11 19:54
名前: 栞。 ◆KsWCjhC.fU (ID: PRmCvUEV)

第七話「兄として」

 森の奥。
 木が鬱蒼と茂る森の奥。
 所々しか光が差し込まないため、そこは深い緑に染まっていた。
 そこに、リョウとカイはいた。

「外に行った方がいいのではないかと……母様はそうお考えなのですね?」
 カイが長い沈黙を破る。
 リョウは無言で頷いた。
「外…ですか……」
 カイは小さく言葉を紡いだ。
「最近のユエの成長は著しい。このまま森にいては、成長に悪影響を与えるのではないかと思ってな」
 リョウは真剣な顔つきだった。
「でも、ユエ独りでは心もとない。だからカイ、お前に一緒にいってもらいたいのだ」
「俺も…」
 リョウはカイを見つめながら言う。
「俺はユエの兄として、ユエについていきます」
 カイはリョウの目を見て、言った。
「そうか」
 リョウはほっとした表情を見せるとどこかへ行った。

「ユエ…」
 カイは愛しい妹を想い浮かべた。
 可愛くて、優しくて、強くて、弱くて、愛しくて。
 大好きだ。
「でも、これは…」
 兄としての感情なのだろうか。