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Re: 木漏れ日の姫。 ( No.37 )
日時: 2010/11/13 19:11
名前: 栞。 ◆KsWCjhC.fU (ID: hj9a4sJB)

第十話「新しい世界」

 「ここ…で合っているのだろうか…」
 カイとユエは新しい住まいとなる家を探していた。
「合っていると思います。海にこんなに近い家なんて、そうそうあるものではありませんし」
 ユエはカイの不安を晴らすように言うと、カイはその家の扉をたたいた。
「すみません。森から、来た者ですが」
 カイがそう言い終わらないうちに、扉のむこうから物音が聞こえて、扉がゆっくりと開いた。
「いらっしゃい。早く入りなさい。寒いでしょう」
 扉から出てきたのは優しく微笑んだ女性だった。

「森からご足労ご苦労様。私はエレナ。よろしくね」
 女性—エレナ—は微笑んだままユエとカイを家の中へと招き入れた。
「俺はカイと言います。こっちは妹の…」
「ユエちゃん」
 エレナはカイの言葉を遮るようにユエの名を呼んだ。
「本当に綺麗な黒髪ね……瞳の色もとっても綺麗」
 エレナはユエの頬をそっと撫でながら呟いた。
「あ…あの……」
 ユエは頬を赤く染めてエレナから目をそらした。
「…でも」
 エレナはユエの必死な抵抗をあっさりと無視して続ける。
「どうして前髪をこんなに伸ばしているの…?」
 突然聞かれ、ユエは驚きながらも答える。
「め、めんどくさくて…」
 ……大分声は裏返ったが。
「面倒だなんて…切ってあげるから…ね?」
 エレナはユエの手を引いて、楽しそうにどこかへ行ってしまった。
「…はぁ」
 カイはそんな二人を目で追いながら溜め息をついた。