ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 木漏れ日の姫。 —参照100突破ありがとうございます— ( No.43 )
- 日時: 2010/11/16 20:55
- 名前: 栞。 ◆KsWCjhC.fU (ID: 5kDSbOyc)
第十二話「神獣」
「貴方達の部屋はこっちよ」
エレナは長い廊下を進んで行く。
「カイは扉の前に青い絨毯が敷いてある部屋よ。ユエはこっち」
エレナは至極楽しそうにユエの手を引いて歩いていった。
「貴方ならきっと気に入るはずよ」
エレナは幸せそうに微笑みながら扉の取っ手に手をかけて、扉を開けた。
「わぁ…」
ユエは思わず言葉を発した。
部屋は普通の部屋だったが、その部屋はユエにはすばらしいものだった。
その部屋からは、海が、見えた。
「ここに来た時は、疲れてあまり見ていなかったでしょう?ここは海が一望出来るの。貴方、海初めてでしょう」
エレナは一通りユエ達にこの家の説明をすると、用事があるから、と言ってどこかへ去ってしまった。
カイも自室へ戻り、ユエは独りになった。
「海…か…」
カイは呟く。
———初めてのはずなのに、ユエはあまり驚かなかった。
———好奇心が旺盛なユエなら、今すぐにでも海に入ると思っていたのに
カイは疑問に思ったが思考することを諦め、寝床に入った。
「綺麗」
ユエは窓から見える海に感嘆の声を上げていた。
———でも
———何だか懐かしい感じがする
ユエは思った。
今は空の色と同じ、暗い色だが、来た時は夕日が煌めいて美しかったが、ユエは驚かなかった。
まるで海を前から知っていた様に。
何だか眠れなくなってしまったユエは、水を飲もうと廊下に出た。
しばらく歩いていると、ユエは一つの部屋の扉の隙間から灯りが漏れていることに気付いた。
ユエは扉を開けて見ると、そこにはエレナがいた。
「エレナさん…?」
ユエが声をかけるとエレナはこちらを振り向いた。
最初は驚いていたが、すぐに笑顔になった。
「駄目じゃない、寝なきゃ」
エレナは困った様に笑いながらユエに言ったがユエはその言葉を聞かずに、エレナがやっていることに興味を持った。
「何をやっているの?」
「神獣の研究よ」
エレナはそう言って微笑んだ。
「神獣?」
ユエが首を傾げると、エレナは神獣のことについて説明し始めた。
「神獣というのはね、この国の象徴ともいえる獣なの。その姿は美しく、まさしく神の獣。主を自分自身で選び、主のいうことは絶対に聞く。誇り高き神の獣」
エレナの表情はうっとりとしていた。
ユエの顔も輝いていく。
「それでね。もしかしたらそこの海にも神獣がいるかもしれないの」
エレナは海を見つめながら呟いた。
ユエもそれに吊られて海に視線をおとした。
「見てみたい」
ユエが自分の思いを口に出すと、エレナはふふっと笑って「もう寝なさい」て言ってユエを部屋まで送っていった。