ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 木漏れ日の姫。オリキャラ募集にご協力お願いします!! ( No.80 )
日時: 2010/11/23 11:53
名前: 栞。 ◆KsWCjhC.fU (ID: yycNjh.Z)

第十五話「ユエの存在」

「今日は町に出かけましょうか」
 エレナはユエとカイを見て言った。
「行ってみたいです」
 ユエはエレナの方に駆け寄った。
 カイもユエの様子を見て椅子から腰を上げた。
「決まりね」
 エレナは二人を見渡して満足したように頷いた。


「ユエ、私はカイと一緒にカイの服を探して来るからここ
にいてね」
 エレナはユエに待っている様に告げて、カイと共にどこかへ行ってしまった。


 ユエはぼーっとして、海を見つめながら歩いていると、一人の女にぶつかった。
「…す、すみません!」
「いや、大丈夫だ」
 女は茶色の髪を肩まで伸ばし、黒のズボンに、黒のコートを着ていた。
「ナイフ…?」
 ユエはぶつかった拍子に左肩から飛び出したモノを手に取った。
「返せ」
 女はユエからナイフを奪い取るとスタスタと歩いて行ってしまった。



———あの娘、他の者とはなんだか雰囲気が違った

 女—デージー—は愛用のナイフを左肩のケースにしまいながら考えていた。
 考えているのは、さっきぶつかった少女—ユエ—のことだ。

———フードをかぶっていて、顔の多くは見えなかったが黒髪だった様な…

———それは無いな。黒髪は王族の証。あの娘が黒髪のはずがない。

———それに私には関係ない。私は聖騎士の仕事さえこなしていればいいのだから。

 デージーは自分の考えに一人頷くと、自分の仕事場、王宮に向かった。


「カイ、貴方なら気付いていると思うけれど……」
「ユエのことですか?」
 エレナは買い物袋をベンチに置いて、自分もベンチに腰掛けた。
「そう。今はフードをかぶせているから黒髪は隠せているけれど……、あの子の過去、話してくれない?」
 エレナは珍しく神妙な顔でカイを見つめた。
「……俺が知っているのは…あいつが捨てられた子というだけです」
「え?」
「あいつが何故黒髪なのか、どうして捨てられたのか、誰が捨てたのか……俺は何も知りません」
 カイは目をつぶったまま静かに言葉を紡ぐ。
「…そう」
 エレナも悲しそうに目を伏せた。