プロローグあの方の手が、別の誰かの手を取る。側に在るのが私でなくてよい。別の誰かでかまわない。あの方が幸せであればそれでよい。私は唯の影に、唯の灯りに、唯の道に、唯の木陰に、唯の小石になろう。唯一つの言葉を胸に抱いて。けれど幸せであれと祈ることだけは許してほしい。