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Re: 戦国の世に生きる(参照300突破! 返信100突破!!) ( No.107 )
日時: 2010/11/14 19:37
名前: 鏖 ◆TeAoSh7Hf6 (ID: BcdVt4VG)

第弐拾七話「近づく終わり」

「明日には豊臣軍が攻めてくる。準備はよいな?」
豊臣軍は一度つついたが、勢力を全て削ぐには至らなかった。
「……」
誰もがこの乱世に終わりを感じていた。最後に残った勢力、豊臣軍。
食うか、食われるか……。その緊張が駆け巡る。

「……」
私も、この気持ちに整理をつけなければならない。

「美麗殿」
「……幸直」
暫く会話をしていなかったが、幸直の方から声をかけてくれた。
「この戦いが終わったら、某たちは……」
乱世が終わり、戦のない幸福が訪れる。
「あぁ……」
まるで夢でも見ているようだ。長い乱世が終わる。
勝つか負けるか、そんなものは解らないが。

「くくっ、美麗」
「……貴様」
「終わってしまいますね」
「……」
なぜ残念そうな顔をしている。
「はぁ、人の血が見れなくなってしまいますねぇ……」
はぁ、と溜息をついてトボトボ歩いて行く。まるで倒れるのではないかと言う足取りで。

「美麗」
「政義……」
最近は、どの男ともぎこちない関係であった……。と思う。
「終わっちまうな」
「そうだな」
と、遠くの空を仰ぐ。
「……今まで死ぬ気で戦ってきたのが、あっさり無駄になるか……。
 それとも、今までの死ぬ気の努力が報われるか……」
「それを今言うな。士気にかかわる」
「悪ぃ」
そう言って去っていく。

「よぉ! ネーチャン」
「泰親。余裕そうだな?」
「トーゼン! 俺は死ぬ気なんざねぇ!」
このネーチャンが得た天下を見るまで死ぬもんか。
「……お前らしいな」
「おうよ! じゃな」
バサバサと飛んできたチカを肩に乗せる。

「美麗、心境は?」
「……元知」
お前がどんな心境か知りたい。私は、私が私でなくなりそうだ……。
「安心せよ。私の策があれば負けぬ」
「心強い」
ふっ、自嘲気味に笑う。
「……死ぬでないぞ」
そう言って、足早に去ってしまった。